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東日本大震災 NPOパートナー協働事業

おばちゃんが伝える良書のチカラ ーおはなしころりん

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「選書の目がすばらしい」

大きな車にたくさんの本を乗せて、小学校や公民館などを巡る「移動図書館」。日本では公立図書館の分館などが進んだことで減少傾向にありますが、今も全国各地のさまざまな場所で利用され、特に本と出会う機会が少ない地域に住む人にとって、大切な場所となっています。

 

日本で2番目に大きい県、岩手県に「ころりん号」「絵本カー」と呼ばれるを運営している民間団体があります。南部の大船渡市で活動するNPO法人おはなしころりんです。毎月1回、市内全11の小学校に本を届けているほか、子育て支援施設や復興公営住宅などで絵本の読み聞かせや本の貸し出し、お茶会などを続けています。学校の先生たちからは「選書の目がすばらしい」と評判で、子どもたちからも「本が好きになった」「来てくれるのが楽しみ」との声が届いています。

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太平洋沿岸に位置する大船渡市は、2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受け、たくさんの本が流されてしまいました。おはなしころりんは、発災からわずか2週間後から避難所を巡回して子どもや高齢者に絵本の読み聞かせを開始。2011年5月からは移動こども図書館事業を、 2015 年1月には地域交流図書室おはなしサロンをスタートしました。

「何もかも流されてしまった当時、支援物資として届けられた本など手に入るものはなんでも読み聞かせに活用していました」。こう話すのは、おはなしころりん理事長で絵本専門士の江刺由紀子さん。大船渡市で生まれた江刺さんは、インドや中東など世界中をまわった後、2003年に帰国し、「読書ボランティアおはなしころりん」を創設。東日本大震災以降は、地域の復興に向けて、本や読み聞かせを通じた復興支援活動に取り組んできました。

地震や津波による甚大な被害は、子どもたちの心身に大きな影響を与えています。本を開く前から「津波の話じゃないよね?」と心配する子どもたちの心情に配慮し、江刺さんは水に流されたり人が死んでしまったりする本は選ばないようにしていた時期もあるといいます。インフラなどハード面の復興が進むにつれて、徐々に力が沸くような本を選ぶように変えていった、と振り返ります。

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本を通じて生きる力を育む

おはなしころりんのスタッフは現在。震災をきっかけに読み聞かせの活動に加わったスタッフもいれば、復興の一助になりたいと他の仕事を続けながら参加するスタッフもいます。「私たちは普通のおばちゃん。専門的なことはできないけれど、本のチカラを信じています。とにかく希望をもてる本、読書に興味がない子どもでも手を伸ばせるようなきっかけになる本を選ぶようにしています」と江刺さん。おはなしころりんでは、より良い本を届けるために、市立図書館職員や学識経験者などから成る「評価・検証委員会」を立ち上げ、定期的に活動の成果を評価・検証する機会を設けています。また、図書環境を改善するためのスタッフ研修にも力を入れているほか、地域住民に本と出会うきっかけをつくる「軒下古本市」の開催や、地元の新聞・ラジオなどでオススメの本を紹介する取り組みも続けています。

 

「震災のとき、小さかった子どもたちはすでに中学生や高校生になり、地域で見かけると『ころりんの人だ』と声をかけてくれるようになりました。地域に信頼の糸が張られ、少しずつ広がっているのを感じています。他方、今の小学6年生は当時1歳。津波を知らない世代の子どもたちも増えていますから、防災関連の本を含めて良書をそろえることに注力しています。すぐに効果が見えるものではありませんが、過去に読んだ本が、人生でふと役に立つことがあります。読書を通じて、”生きる力”を育む機会をもっともっと増やしたいのです」(江刺さん)

 

東日本大震災から10年以上が経ち、国や行政、民間企業などからの復興支援金の多くは継続が難しくなり、打ち切られるケースが増えています。しかし、被災した地域のソフト面の復興はまさにこれからで、特に大切な人や居場所を失った子どもたちの心に寄り添い続ける支援は、今後も必要です。Civic Forceは、東日本大震災支援「NPOパートナー協働事業」の一環で、おはなしころりんの運営をサポートしています。

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