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被災地を支援する

2020/10/27

【東日本大震災】仮設住宅の生活を検証し、次の災害に生かすーNPOパートナー協働事業(記憶の伝承)

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「震災前はどこに住んでいましたか?」

「どこの仮設住宅にいましたか?」

「仮設にいたころの楽しみは?」

「当時、困ったことは?」

 

仮設住宅に関する設問が書かれた「仮設住宅に関するアンケート」。ほかにも「仮設住宅後の再建先は?」「支援の状況はどうだった?」など、たくさんの質問が並んでいます。

この質問票を手に、今、かつて仮設住宅に住んでいた人々への聞き取り調査を行っている人々がいます。宮城県石巻市にある「石巻じちれん」です。

石巻じちれんは、2016年、仮設住宅から復興公営住宅への移転時期に結成された一般社団法人で、スローガンは「孤独死をなくそう」。1995年の阪神淡路大震災で相次いだ”孤独死”が、東日本大震災の被災地である石巻市内でも起きないよう様々な活動を続けてきました。メンバーは、2011年秋、仮設住宅の役員を中心に設立された「仮設住宅連合」の事務局が中心で、仮設住宅で噴出する課題の集約、仮設団体間の情報共有や連携協力を推進してきました。

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そんな石巻じちれんが今、最も力を入れて取り組んでいるのが、「仮設住宅の検証事業」です。石巻市は、被災自治体の中で最も多い7000戸以上の仮設住宅(134団地)が建設され、2020年までにすべてが解体されましたが、当時の暮らしにどのような課題があったのか、検証は十分に行われていません。

「東日本大震災以降、全国各地で災害が相次ぎ、ハード面の改善は進んできましたが、ソフト面についてはまだまだこれから。改善の余地があります」と話すのは、石巻じちれん事務局の田上琢磨さん。仮設住宅におけるソフト面の課題とは、主に仮設団地内外のコミュニティ形成や利便性などで、仮設住宅団地の運営の仕方や立地によって、生活の満足度や健康状態に大きく影響を及ぼしたと言われています。しかし、その実態は明らかではなく、田上さんらは次の災害の被災地でも役立つ情報をまとめることで、孤立や孤独死を減らしたいと切に願っています。

0825雄勝地区雄勝中央団地ヒアリング③.JPG

東日本大震災支援事業において「記憶の伝承」をテーマに掲げるCivic Forceは、2020年4月から石巻じちれんが取り組む検証事業をサポートしています。検証事業では、仮設住宅の住民とコミュニティリーダー、支援者、行政関係者らを対象にヒアリングを実施中。500件のアンケート回答を集めることを目標に、2人1組で石巻市内をまわっています。そして、アンケートの結果は、専門家と協力して分析し、一冊の報告書としてまとめ全国の自治体や支援団体などへ配布する計画です。

対面でアンケートを集める手法を選んだ背景について、田上さんは「紙を渡して回収するだけでは本音が引き出しづらい」と言います。そのため、調査では実際に被災したメンバーが、まず自己紹介をして雑談をしながら、徐々に相手の状況を聞き出していきます。

「発災直後の体験談から仮設での思い出話、現在の苦労など話を聞きだすと、お一人だけで1〜2時間ほどかかってしまうこともあります。地道な作業ですが、聞けば聞くほど新しい気づきがあり日々勉強です。被災の経験は一人一人異なり、誰一人として同じものはありません」と話すのは、調査員の大嶋美千代さん。アンケートを集めるだけでなく、被災者一人一人に寄り添う”傾聴”の役割も果たしているのかもしれません。

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冒頭で紹介したアンケートの最後に「次なる災害が起きたとき、あなたが伝えたいメッセージは?」という質問があります。田上さん曰く、そこには「隣近所とのつきあいを大切に」「閉じこもらないでください」など、近隣とのコミュニケーションの大切さを伝えるメッセージが多かったそうです。また、車椅子などマイノリティの方やコミュニティへの配慮、孤立防止の観点から「急いで仮設住宅を建てるよりも同じ地区ごとの仮設入居や集団移転をすべき」と訴える声もありました。

 

災害はもう起きてほしくない。災害を経験した人ほどその思いを強く持っていますが、災害は近い将来もきっとまた起きてしまいます。そのとき、被災した地域で住み続けると決意した人たちへ、経験者だからこそ伝えられることがあります。一つ一つのメッセージを重く受け止め、災害が起きても被害を最小限に食い止めるための一助となれるよう、私たちも尽力します。