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2014/09/13

【東日本大震災支援】福島からの移住希望者に向け「神石高原ツアー」開催

移り変わる被災地のニーズに対応するため、専門性を持つNPOや被災地で立ち上がった団体などとともに東北の復興をサポートするCivic Forceの「NPOパートナー協働事業」。今回は、福島からの避難・移住希望者に向け、8月に広島で視察ツアーを実施した「NPO法人nina神石高原」(広島)の取り組みについて紹介します。

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東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所事故の影響で、福島県外へ避難している人は、全国に4万7,149人(福島県HP)に及び、多くは、親族や知人宅、仮設住宅などで避難生活を続けています。

福島県が今年4月に実施した避難者意向調査によると、避難世帯の半数近くは、放射能汚染の影響で家族が2カ所以上に分散し、ばらばらに生活しています。住民票は震災前から住んでいた住所に置いたまま。「もといた場所に戻りたい」「できるだけ近くに住みたい」と要望する人が多いものの、放射線の影響や不安が解消される見込みはなく、仮設住宅の供与期間延長を前に、長期的な「住み家」について考える時期が来ています。

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突然の事故により、厳しい生活を強いられている人々を支えるには、福島への帰還支援をサポートするだけでなく、故郷を離れ新しい生活を始めた人々への支援も必要です。こうしたなか、広島県北東部にある神石郡神石高原町で、8月22-24日、移住希望者に向けた「神石高原ツアー」が開催されました。主催は、福島からの移住希望者に関する調査や移住支援活動、神石高原町のまちおこしなどに取り組むNPO法人「nina(にーな)神石高原」。福島から2人が参加したこのツアーでは、神石高原への理解を深めてもらうことを目的に、元副町長でnina神石高原の理事長を務める上山実さんや事務局長の入江嘉則さんが、神石高原町の観光スポットや病院、役場、学校などを案内しながら、神石高原で暮らす魅力やまちおこしの取り組みについて紹介しました。

福島からこのツアーに参加したのは、福島県いわき市在住の大川幸子さんと、大熊町の加藤百合子さん。大川さんは、NPO法人「いわきFP・e-らいふ」の代表で、ファイナンシャルプランナーCFP®として、いわき市で避難生活を送る人々をサポートしています。「避難先・移住先の一つとして、神石高原町の取り組みを知った。実際に見聞きした情報を、移住を検討している人たちに伝えようと参加した」と大川さん。一方、加藤さんは「夫を亡くし、子育てもひと段落して、今は一人身。新しい場所で新たな一歩を踏み出したいと考えているから」と参加の理由を語ってくれました。

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山陽新幹線・山陽本線「福山」駅から車で約1時間。標高400~700メートルの高原地形に位置する神石高原町は、国定公園「帝釈峡((たいしゃくきょう)※写真左」や、レジャー施設仙養ケ原など、雄大な自然に恵まれる一方、少子高齢化が進み、過疎化を食い止めるためにまちおこしのイベントが頻繁に実施されています。

福島から遠く離れた地で新しい生活を始める決意を固めるためには、生活環境や周囲の人間関係をはじめ、働く場所の確保も重要です。今回のツアーの案内役としてもう一人、すでに2013年に福島から家族とともに移住してきた相馬行胤(みちたね)さんがいます。相馬さんは、移住の理由について「福島には、全国の自治体から移住の話が寄せられているが、空き家情報ばかりで、その先の生活や仕事のことまで考えてくれるところは正直少ない。その点、神石高原では、NPOと自治体が一緒になって受け入れ準備をしている」と言います。福島の旧相馬中村藩主家34代当主でもある相馬さんは、避難生活を送る人たちの危機的状況を危惧し、町内の遊休農地を活用して、農地を失った被災者などに再び農業を始めてもらえたら、と受け入れ体制の整備を進めています。

3日間のツアーを通じて、加藤さんは「相馬さんのように福島のために前を向いて動いている若い人と会えて勇気が湧いた。これを機に移住を検討したい」と話しています。また、森林に囲まれた神石高原町は、山々の自然が多い福島の地形にもよく似ているそうです。

遠い広島への移住構想実現のためには、さらに多くの人に神石高原町の魅力を知ってもらい、安心して暮らせる体制づくりが不可欠です。Civic Forceでは、引き続きNPOパートナー協働事業を通じて、nina神石高原の取り組みを応援していきます。