2017/01/25
災害時に見落とされがちな子どもたちのケア
「ちょっとした物音に敏感」「イライラして怒りっぽい」「夜眠れなくなってしまった」——突如発生する大規模な自然災害は、私たちからたくさんのものを奪い、一人一人の心を不安定にさせます。
なかでも災害時に見落とされがちと言われるのが、心の傷を負った子どもたちの存在です。恐怖や不安、孤立感、罪悪感、無力感など災害後のストレス反応はさまざまで、災害の衝撃から引き起こされるものと、災害後の不自由な生活状況に起因するものがあります。子どもたちが発するSOSに気づき、早期に適切な対処をしてあげることが重要です。
2016年4月14日以降、度重なる地震に見舞われた熊本でも、多くの子どもたちがストレスを抱えていました。しかし、心の問題を抱えていても、必死で家屋の方付けをする大人たちや、大勢が共同で暮らす避難生活のなかで、気持ちを表に出せない子どもたちもいたようです。
特に年齢の低い子どもは、体験を言葉でうまく伝えられません。時間が経ってからPTSD(心的外傷後ストレス障害)につながる恐れもあり、彼らにとって被災直後だけが大変な時期ではないのです。
発災から4日後に結成された「熊本 子ども・女性支援ネット」
こうした課題を解決していくためには、親や学校だけでなく、社会全体のサポートが必要です。そこで発災からわずか4日後の4月20 日、自ら被害にあいながらも立ち上がった女性たちがいました。「我慢して気持ちを出せない子どもや女性の声を聞き、深刻な問題にならないように支援したい」。そんな思いで結成されたのが「熊本・子ども女性支援ネット(KCW)」です。
設立メンバーは、NPO法人環境ネットワーク熊本事務局長の園田敬子さん、熊本市男女共同参画センター館長の藤井宥貴子さん、一般社団法人ゆずり葉代表理事の清水菜保子さんの3人でいずれも熊本でNPO活動や女性・子ども支援などを続けてきた経験があります。社会問題の解決を目指すリーダーをサポートしてきた公益社団法人日本サードセクター経営者協会執行理事の藤岡喜美子さんもアドバイザーを務めています。
KCWがまず目指したのは、発災直後の混乱のなかで痛感した「団体間の連携不足」に立ち向かうこと。熊本県には、子どもや女性の分野で活動する団体が複数あるものの、その詳細情報を手にいれることは難しい状況でした。そこで、KCWは県内1163団体にアンケートを送り、基礎データから活動内容、課題などを整理。回答を得られたのは約120件でしたが、直接出向いてヒアリングなどを続け情報を集めました。また、ネットワーク強化を目的とした連絡会や意見交換会を5月から月に数回実施しました。
「話し合う場をつくったりアンケートの結果から、改めて強く実感したことがある」と園田さん(写真右から2人目)は言います。
見えてきたのは、各団体それぞれが目の前の課題解決に精一杯で、事務的な作業をする時間や人が足りず、資金調達のための書類申請などができないという現実。組織基盤やマネジメント強化のための支援の手が必要だと確信したそうです。
そして、志ある人や組織をつなぐ “中間支援組織”として旗揚げしてから9カ月以上が経った今、地域全体の問題や各団体の継続、事業に関する悩みまで、KCWにはさまざまな相談が寄せられるようになってきました。熊本県内だけでなく、県外の外部団体からの問い合わせや団体間のコーディネート、個別アドバイスなどの依頼を受けることも増えています。
また、KCWでは、ネットワークづくりだけでなく、震災後の心のケアを目指す「くまもとハグプロジェクト」や、被災した子どもたちが自然のなかで体を動かす「森の教室プログラム」を主催しています。
Civic Forceでは、熊本地震支援「パートナー協働事業」の一環で、「熊本・子ども女性支援ネット(KCW)」の活動をサポートしています。