2017/02/03
パラリンピックの正式種目“ボッチャ”という競技を知っていますか? 2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックで、日本代表が初めて銀メダルを獲得し、日本でも話題になりました。
ボッチャは、もともと脳性麻痺などで体が思うように動かせない人たちに向けて考案されたヨーロッパ発の障がい者スポーツですが、今や障がいのある人もない人も誰もが一緒に楽しめる”ユニバーサルスポーツ”として親しまれるようになってきました。
2016年4月の地震で大きな被害を受けた熊本でも今、ボッチャの関連イベントが盛んに実施されています。1月20日には、リオ・パラリンピックで銀メダルを獲得したボッチャ日本代表の杉村英孝選手と廣瀬隆喜選手、村上光輝コーチが、出水南小学校(熊本市)を訪問し、4年生から6年生までの約400人と交流しました。
ボッチャでは、「ジャックボール」と呼ばれる白いボール(目標球)を投げ、赤・青それぞれ6球ずつのボールを投げたり転がしたりしながら、いかにジャックボールに近づけるかを競います。杉村さんと廣瀬さんが高度な技を披露しながらボッチャを紹介すると、子どもたちから歓声がわきました。その後、投げ方を教わった児童たちは各ブロック5〜6人編成で複数のグループに分かれて対戦。競技を体験した児童たちは「狙ったところに投げられた!」「投げたかったところより少しずれちゃった」と歓声をあげながら、ボッチャの面白さや難しさを実感したようです。
ゲームが終わった後には、選手への質問の時間が設けられ、児童たちは「いつ始めましたか?」「ボッチャをしていて嬉しいと感じるのはどんなときですか?」「大変なことは?」など積極的に質問。「仕事の後に練習するのが大変」と話す選手の言葉から、華々しい舞台の裏にある努力や苦労も垣間見たようです。
今回のイベントは、NHK厚生文化事業団などが主催する交流教室の一環で、Civic Forceのパートナー団体「Arts and Sports for everyone」がボッチャの貸し出しや前日・当日の準備などで協力。出水南小学校の松島和寿校長は、「ボッチャを必要数借りられたおかげで、子どもたちみんなが体験できた」と話していました。なお、ボッチャ体験会は近隣の熊本支援学校でも実施。当初、熊本支援学校小学部と出水南小学校との交流イベントとして実施する計画でしたが、インフルエンザの影響で、当日はそれぞれの学校で開催されました。
「パラリンピアンの模範演技を見た後に体験したので、子どもたちの上達は早かった。これからもたくさんの人に伝えたい」と話すのは、ASE代表の吉田祐一さん。ASEメンバーの中村友花里さんも「子どもたちがボッチャを楽しんでいる姿を見るのが楽しい。支援学校との交流がなくなってしまい残念ですが、次につなげたい」と話しています。ASEでは、今後もボッチャを通じて障がいのある人・ない人の垣根を取り払っていく活動を精力的に続けていく予定です。
◆Arts and Sports for everyone(ASE)×Civic Force
知的障がい者の社会支援を行う「スペシャルオリンピックス日本・熊本」のメンバーらによって設立されたASE。熊本地震後、発災直後から避難所への物資支援などを続け、現在、“ボッチャ”を通じた仮設住宅住民の孤立化防止のサポートや特別支援学校などとの交流イベントを開催しています。Civic Forceの「NPOパートナー協働事業」では、2017年1月からASEの活動をサポートし、熊本地震で露呈した障がい者への理解不足の課題を解決するため、関連団体間の連携強化のためのスポーツフォーラムの開催も後押ししていきます。ASEでは、2017年3月の「スペシャルオリンピックス冬季世界大会2017(オーストリア)」に出場する日本選手団の派遣費用を応援するプロジェクトも始めています。https://a-port.asahi.com/projects/WG2017Austria/