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被災地を支援する

2014/02/13

【東日本大震災支援】「集会所はみんなが集まりやすい場所に」(前編)

震災から2年11カ月。被災地では、インフラ整備が急ピッチで進められる一方、新しいまちづくりをどのように進めていくべきか議論が続けられています。今も試行錯誤が続く「集団移転」は、住民の合意形成が進まず、全戸合意の難しさが浮き彫りになる地域が目立っています。こうしたなか、外部の専門家などと協力しながら、住民が主体的に新しいまちをつくっていく機運を高めてきた地域があります。今回は、Civic Forceが2年以上にわたってサポートしてきた宮城県気仙沼市唐桑町にある大沢地区の事例を紹介します。

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雪がちらつく1月末、海と山の両方から冷たい風が吹きつける中、老若男女が列をつくって坂道をのぼっています。みな、雪でぬかるんだ道を進むため長靴を履き、頭にヘルメットをかぶっています。真剣な眼差しで地図を見ながら、「候補地Aは遠い」「Bの方が近いな」などと口々に話し合っています。

ここは、宮城県の北東端に位置する気仙沼市唐桑町大沢地区。この地区には、小さな漁港を中心に186世帯が暮らしていましたが、震災で8割近い家屋が罹災し40人が亡くなるなど壊滅的な被害を受けました。しかし、コミュニティ再生への意識や住民間の結束は固く、3カ月後の2011年6月に、地元有志で「大沢地区防災集団移転促進事業期成同盟会」(以下期成同盟会)を設立。同地区の大半が「災害危険区域」に指定され新たな移転先を探さなければならないなか、同会が中心となって高台移転に関する勉強会の開催や行政に対する要望書の提出、高台の地権者への交渉、市長への定期的な報告といった膨大な作業を地道に続け、2012年5月には、気仙沼市の先陣を切って、約100軒の集団移転の大臣合意を得ました。現在は、2015年6月に控えた「移転」の際、「みんなで大沢に帰還」できるよう、持続可能なコミュニティの形成や浸水域の跡地利用など、住民が主体的に新しいまちづくりを担えるよう議論が進められています。

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期成同盟会と同地区の自治会などが企画した今回の「大沢まちづくり会議 ~集会所候補地まちあるき」は、こうした住民の主体性を重視したまちづくり活動の一環です。それまで数回にわたって「憩いの家」と呼ばれる集会所の用途や間取りなどについて話し合いを続け、この日も最寄りの仮設住宅などから約30人が参加。集会所設置の候補地となっている3つの場所までの道のりを実際に歩き、距離感覚や立地などを確認しました。その後、2013年12月に完成したばかりの大沢カフェに集まり、「候補地Bは日常的に行きやすい」「Aのほうが津波が来たときに逃げやすいかも」「Cが一番ふさわしい」などと歩いた感想を改めて話し合いました。

大沢地区の場合、希望者全員が1カ所に移転するのではなく、地理的条件から、2カ所に分散しなければなりません。移転までの間に、住民の思いや要望を確認・反映し、地域がばらばらにならないよう、月に一度のペースでこうした意見交換会を実施。「防潮堤の建設」「国道のかさ上げ」「道の駅の設置」など、これまでさまざまなテーマでまちの未来について話し合ってきました。

集団移転とコミュニティの再建には、地区毎の事情を理解するだけでなく、集落再建や移転元の土地の再利用などに関する制度を複合的に運用していくための専門的知見が必要です。そこで、期成同盟会の活動をバックアップしてきたのが、気仙沼に縁のある建築・都市計画専攻の大学研究室(横浜市立大学・鈴木研究室、神戸大学・槻橋研究室、東北芸術工科大学有志・竹内研究室等)の指導教官と学生で構成される「気仙沼みらい計画大沢チーム」(以下大沢チーム)です。大沢チームは、これまでに過去の街並みを再現する模型作り、まちの記憶を語り合う「『記憶の街』ワークショップ」のほか、移転先のまちづくりについて話し合う「大沢みらい集会」、浸水区域などの跡地利用を含む地区全体のまちづくりをテーマにした「大沢まちづくり会議」を定期的に開催してきました。

次回は、大沢地区の集団移転にかかわるさまざまな人々の思いに迫ります。

 

Column

復興キーワード 「防災集団移転促進事業」

防災集団移転促進事業は、災害で被災したり今後被災する恐れのある住宅地を安全な場所に移転させるため、地方自治体が国の補助を受けて、移転先の高台などの土地を取得し、住宅を建てられるよう整備する国土交通省管轄事業。津波の危険から居住に適さない区域の集落を、安全な区域へ移転するこの事業は、被災した全335地区すべてが国交省の同意を得て、2014年1月現在、約64%が着工に入っています。また、被災者が自力で住宅を再建する場合、お金に余裕のある人は自治体から土地を購入し、余裕がなければ自治体から借りて使用料を払いますが、自宅の自力再建が難しい人には「災害公営住宅」が整備されます。災害公営住宅は、必要とされる2万1,421戸のうち60%の工事が開始されています。このほか、被災地域の復興を先導する拠点をつくる「津波復興拠点整備事業」や「都市再生区画整理事業」なども工事に着手しています。