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被災地を支援する

2014/02/14

【東日本大震災支援】行政と住民との間に立つ建築家の役割(後編)

前回につづき、宮城県気仙沼市唐桑町にある大沢地区の“集団移転“に向けた取り組みを紹介します。

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大沢地区防災集団移転促進事業期成同盟会(以下期成同盟会)と気仙沼みらい計画大沢チーム(以下大沢チーム)が続けてきた活動の一つに、住民向けの「住宅相談会」があります。

集団移転先の造成の着工が始まり、住宅の再建について考える住民が増える中、住宅相談会では、住宅再建に関する悩みや間取りについての相談を受け付けています。初めて実施した2013年8月には、まず住民の悩みや考えを聞くことから始め、11月・12月の2回目・3回目の相談会では、住民から聞いた話をもとに間取りのモデルプランを作成し、概算見積もりを提示。合わせて、住民たちが同時に発注する「共同購入」によって、工事の効率化とコストダウンが実現できることなどを説明しました。また、気仙沼信用金庫と協力し、住宅相談だけでなく資金運用関連の相談ブースも設置。地区住民のほとんどが参加し、好評を得ました。

期成同盟会事務局長の星英伯さんは、「震災からわずか3カ月後に会を立ち上げたものの、やるべきことが山積みで、まったくの手探り状態だった」と言います。そんなときに大沢チームの申し出を受け、こうした相談会やまちづくりワークショップを定期的に開催してきました。

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大沢チームに参加する学生は、大沢に入った当初、「今まで住民がどういう町に住んでいたのか」を探るためのワークショップを繰り返し、その後、高台移転の構想を模型にして示したり、地図を使って津波からの逃げ道や公営住宅の配置場所などさまざまなアイデアを提案してきました。神戸大学大学院工学研究科2年の小川紘司さんは、「大沢に通い、住民の方と何度も話してきたが、1年、2年と時間が経ち、ようやく少しずつ『自分たちはこうしたい』と要望を伝えてくれるようになってきた」と言います。一方、住民たちは「建築に詳しい若い子たちが地域のためにがんばってくれてるし、ありがたい」と話しています。

大沢チームのメンバーである東北芸術工科大学の竹内昌義教授(写真右から5人目)は、震災後、改めて建築家としての役割を考え続けてきた一人です。大沢地区における大沢チームの役割は、「行政が考えている災害復興支援と、住民の皆さんの要望の間に立ち、技術的な間を取り持つこと」。気仙沼市の方針を含めて学生とともにさまざまなアイデアを出しつつ、どのように住民側から意見を引き出すかを意識したワークショップを心掛けてきました。「滝や山が織り成す大沢らしい風景や、防災に強いまちづくり、そして私たちの専門である再生可能エネルギーの導入など、たくさんのことを話し合ってきた。学生のひたむきさが地域に受け入れられつつあり、また学生にとっても貴重な学びの場となっている。地元の人と私たちの考えることがすれ違うことがあっても、時間をかけていくなかで共通のものが見つかっていく」。

 

家や財産、職を失ってしまった被災者一人一人の将来に向けた意思や決定は、国や行政がトップダウンで決められるものではありません。しかし、被災地では、津波の危険を覚悟で元の場所に戻って暮らすことを希望する人や津波が届かない高台への移転を切望する人などさまざまな意見があり、それらを地域住民のみでまとめることも容易ではありません。Civic Forceは、こうした課題に向き合い、まちの将来を見据えて活動する大沢地区のような人々を、中長期復興支援「共還まちづくりプロジェクト ~地域発・住まいとしごとの創造的復興チャレンジ支援」の一環で応援してきました。大沢チームや期成同盟会の運営資金、専門家の派遣支援、書籍の出版、就業の場の創出などを通じて、2015年の「移転」に向けて奮闘する人々をサポートし、また、多くの被災地にとって、震災以前から課題となっていた少子高齢化による人口減少に歯止めをかけ、持続可能なまちづくりを推進していきます。