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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/06/08

6月7日(火)足りないカウンセラー ―協働パートナー紹介

昨日の活動報告から引き続き、岩手県陸前高田市・大船渡市・住田町など気仙地域を中心に支援活動を展開する「NPO愛知ネット(愛知県安城市)」とのパートナー協働事業についてお伝えいたします。

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4月。NPO愛知ネット(愛知県安城市)では、Civic Forceとの協働事業である心のケア事業を展開するため臨床心理士を岩手県大船渡市、住田町などの気仙地域へ派遣しました。狙いは、避難所で暮らす被災者向けに巡回カウンセリングと、被災した子供たちとの接し方に戸惑う学校教員や子供の親への対策指導や勉強会の実施です。

NPO愛知ネットは、岩手県大船渡市と陸前高田市の両市に隣接する住田町の農政会館前にトレーラーハウスを設置。臨床心理士含め15~6名のスタッフが現地入りし、トレーラーハウスを事務所兼宿泊所として使用しています。NPO愛知ネットでは、臨床心理士と長期スタッフの3~4人で展開する心のケア事業のほか、大船渡市や陸前高田市の地元のNPO9団体で組織する「気仙市民復興支援会議」で調整役を担います。ほかにも陸前高田市の防潮林で津波被害から残った一本松の保存事業、被災者が仮設住宅へ移る際に必要な生活物資を支援する事業など、多方面から気仙地区へ支援活動を行っています。

心のケア事業については支援活動を始めた当時、大船渡市災害対策本部では医療や介護分野で活躍するNPOなど8団体の編成チームが活動していました。NPO愛知ネットは同チームに参加し、避難所巡回カウンセリング展開。常時、3名体制で巡回していますが、大船渡市内に50か所以上ある避難所に対応するにも、人手が足りていない状況です。

「20人に一人は、継続的な心のケアが必要」。派遣された臨床心理士が日々、避難所に出入りする過程で得た感触です。家族を亡くしたひと、家を失った人などのケアが必要と思われる方々と接触する一方で、避難所内で孤立している人も目につきます。地震前からコミュニティとの関わりを持っていなかった人などが、避難所での集団生活になじめず苦労しているケースも少なくありません。カウンセリング対象者には、被災者のほか、避難所の運営スタッフや保健師など支援活動を展開する人々も含まれます。同様に、教師や消防団からもニーズが上がってもいます。

人手が足りない中、継続してカウンセリングが必要な方を受け入れるために、愛知ネットでは250人が避難する大船渡市民文化会館(リアスホール)の駐車場に、トレーラーハウスを使用して、カウンセリングルーム「こころの里」を設置しました。プライバシーに配慮した独立空間で相談者に思う存分、抱えていた思いを吐き出してもらいます。NPO愛知ネットの天野竹行理事長は「カウンセリングが必要だからと言って、対象者に話をさせすぎてもよくないようだ。そのさじ加減がとても難しく、心のケアのプロでなければ分からないだろう」と、専門家の重要性を説きます。


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(カウンセリングルーム「こころの里」)

気仙地域ではもともと幼なじみや家族同士の結びつきが強く、みなさん世代を超えてお互いのことをよく知っています。一方で、対人関係の距離間が近すぎるためか、親族や他人の家庭内の事情まで知られることが多く、プライバシーが守られにくいという印象もあります。たとえ同じ気仙地域であっても、合併前の小さな集落単位の絆が強く、近隣地域と連携を取ることに抵抗を示す傾向もあるように感じられました。そんな地元の人にも抵抗なく使ってもらえるよう、避難所に通い詰め、被災者の方々との地道な関係づくりを心がけてきました。心の専門家が常駐する「こころの里」の需要は今後増えると考えています。

学校現場での心のケアも早急に取り組まなければならない事業と位置付けています。4月には、2つの特別支援学校などで教職員向けに「被災児童生徒への心のケア」をテーマに研修会を実施。計130名の教師が参加してくれました。次なる研修会の実施に向けて、気仙地区の学校に対してニーズの聞き取り調査をしています。

今回の協働事業では、各県の臨床心理士や愛知県の臨床心理士会との連携で、臨床心理士を派遣していますが、天野理事長は「今回の災害に関する相談は、内容・件数ともに臨床心理士にとっても大変なもの。彼らの精神的負担を考えると一人あたりの長期間の常駐は避けたい」と考えます。現段階では複数の臨床心理士でローテーションを組むよう考えていますが、避難所や被災者との関係構築には時間もかかり、現地に入り込むまでに相当の配慮が必要でした。

これから、仮設住宅へ移り住んだ被災者への個別相談や陸前高田市への事業拡大を考慮しても、地元の精神科医や臨床心理士たちとの協業は必要不可欠です。今後の事業展望について、天野理事長は「私たちは微力です。資源を集中し、長期にわたり活動を展開して行きたい。そして一人でも多くの笑顔がある地域にしたい」と考えます。