災害支援のプロフェッショナル Civic Force(シビックフォース)

活動報告

被災地を支援する

その他

2011/06/20

牡蠣養殖の再開の一歩

宮城県の最北東端に位置し、太平洋に突き出た唐桑半島にある気仙沼市唐桑町は、三方を海に囲まれ、リアス式海岸特有の複雑な入り江で行われる牡蠣やホタテ、ワカメなどの海産物の養殖業が昔から盛んな町でした。
また、唐桑町は、20年以上も前から、地元の漁師さんらを中心に、毎年、室根山に広葉樹を植林する「森は海の恋人植樹祭」を行っていることでも全国的に有名です。遠く離れた森の環境を守ることが、やがては海の美しさや生態系を守ることにつながり、川が運ぶ森の養分が牡蠣の餌となる植物プランクトンを育むのです。

この唐桑半島も津波による甚大な被害を受けました。船や養殖関連施設もそのほとんどが跡形も無く流され、漁師さんたちは仕事の術を無くしました。
Civic Forceは漁業を中心とした産業復興支援の一環として、養殖の再開に必要な「道具」を無償で貸与することを通じで、この地域の養殖業の復興支援を行うことにしました。

IMG_4071.JPG IMG_4058.JPG

(唐桑半島の舞根地区の津波の被害の様子。漁港の一部は地盤沈下している。)

具体的にはまず、良質な牡蠣の生産環境を保全するための活動を推進する漁師さんたちの任意団体「牡蠣の森を慕う会」に対して、養殖いかだに必要な資材(木材、釘、ロープ等)や船を無償貸与しました。これらの漁具は、「牡蠣の森を慕う会」及び同会の活動に従事する生産者グループ(計7生産者)が利用する予定です。

6/17からは、早速このいかだの資材を組み立て、牡蠣の「採苗」を行う作業が行われました。カキを養殖する際には、ホタテの殻に穴を空け産卵期に海中に入れ牡蠣を付着させ育てます。ホタテの殻にくっついた牡蠣の稚貝は、石巻市の震災の被害を免れた業者から仕入れたそうです。

写真.JPG

(杉長木を組んでロープや釘で留め、フロートで浮かせた牡蠣養殖用のいかだ)

このホタテの殻一枚一枚を海に沈める網に挟み込む作業を、Civic Forceのスタッフも週末お手伝いをしました。網は、津波で流されたものを一本一本この日のために、山で拾い集めたそうです。そして、一台一台、釘を打ちつけて作ったいかだをゆっくりと船で曳き、舞根湾の既にがれきの撤去が済んだ場所に浮かべ、このいかだから種牡蠣を挟んだ網を海中に沈めました。

写真.jpg

(種牡蠣を綱に挟む作業。生産者グループの他に、ボランティアの方々も参加していた。)

牡蠣の稚貝が夏に育成するように6月の梅雨の時期に採苗作業を行いましたが、早ければ来年の春には第一弾の牡蠣が収穫できる予定です。いかだから海中を覗き込んで見つめている漁師さんたちは、まるで「大きく育てよ」と牡蠣の稚貝に声をかけているようでした。養殖の再開に一歩進み始めた唐桑半島の漁師さんたち、Civic Forceでは被災者の方々の生活再建に結びつく支援を今後も展開していきます。