災害支援のプロフェッショナル Civic Force(シビックフォース)

HOME 活動報告 被災地を支援する 東日本大震災支援事業 NPOパートナー協働事業 「まちの魅力」、見直すワークショップ――協働パートナー紹介

活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2012/01/05

「まちの魅力」、見直すワークショップ――協働パートナー紹介

12月22日の活動報告で紹介した宮城県気仙沼市本吉町小泉地区は、津波で甚大な被害を受けましたが、被災地の中でもいち早く高台への移転を決め、住民主導で動き始めた地域の一つです。Civic ForceのNPOパートナー協働事業では、日本建築学会が地元の小泉地区明日を考える会と協力して、この地域の復興まちづくりをサポートしてきました。住民主体のまちづくりをどのように実現していくべきか。小泉地区の人々が続けてきたワークショップの様子から、そのヒントを得ることができます。

======================================

 

1119鳥瞰図小泉地区.jpg

青い海と広がる田畑、木々に包まれるように並ぶ家々、町の中心には川が流れ、並木道の桜はピンクに色づいています。この美しい風景は、仮設住宅で暮らす小泉地区の人々の話し合いの中から生まれた「未来の小泉地区」の鳥瞰図(左図)です。

小泉地区では518世帯のうち、266世帯が流出・全壊、42世帯が半壊・浸水し、住民の半数以上が今も仮設住宅での生活を余儀なくされています。公民館、集会場、消防団屯所が津波で流され、人の集まる施設も失ってしまいました。しかし、4月に提示された国土交通省の国庫補助事業「防災集団移転促進事業」に期待を寄せ、同地区の有志が集まって「小泉地区明日を考える会」を結成。「集団移転協議会」設立に向けて、住民へのアンケート集計や行政との調整、県内外の専門家の協力要請など様々な準備を進めてきました。

「もう一度みんなで一緒に暮らそう」――そんな目標を掲げ、集団移転に向けて活動する中、特に力を入れてきたのが、住民主体の「まちづくりワークショップ」です。これは、小泉地区明日を考える会の呼びかけで始まり、仮設住宅の集会場や学校施設を利用して、7月から毎月1~2回、まちの人々が新しいまちづくりについて考え、話し合う場となっています。コーディネーター役として、北海道南西沖地震で被災した奥尻島の集団移転に詳しい北海道大学教授の森傑さん(日本建築学会会員)と、札幌市の一級建築士事務所(株)アトリエブンク常務取締役の和田敦さんらが協力しています。

7月に初めて開催された第1回フォーラムでは100人を超える住民が参加、その後7月20日から始まったワークショップの第1回では、「継承すべき小泉のよいところ」をテーマに、住民が地区の良さについて意見を出し合いました。「ワークショップってなんだ?」と、最初は戸惑う人もいましたが、複数のグループに分かれてディスカッションが始まると、次々に意見が飛び出しました。

「近所同志のつながりがつえぇ」「いいてーごとが言い合える」「魚介類が豊富で野菜もうまい」「うなぎとりや鮭の一本釣り、海水浴、サーフィンができる波も有名だ」「伝統文化が残っとる」などなど、話はつきません。また、「みぃんな知ってるから隠しごとはできん」「来る者拒まず、去る者追っちゃう」「(近所の人が)家の冷蔵庫に勝手に魚入れてたこともある」と、冗談も飛び交いました。

「小泉地区のよいところ」をテーマにしたワークショップは、その後も数回にわたって実施され、出された意見は「人」「自然」「まち」と分類され、さらにこまかくカテゴリー分けされて、大きな模造紙の上にまとめられました。そして、「小泉地区の良さ」を見直す原点として、今も集会所の壁に貼られています

笑いが絶えない人々の雰囲気の良さも、小泉地区の魅力の一つです。和気あいあいとした雰囲気の中、このほか「小泉地区がずっと元気でいるには」「人~まち~自然」などさまざまなテーマで話し合いを重ね、7月から12月までの10回にわたって、小泉地区の将来像を共有してきました。「町の将来のこと、ちゃんと考えたいから」「仮設に1人でいるよりみんなとしゃべってるのが楽しいから」と、参加者の人数も徐々に増えています。

冒頭の鳥瞰図は、こうした話し合いの中から生み出された、小泉地区の人々による小泉地区のための将来の姿です。自然豊かで笑顔にあふれた暮らしを、みんなで一緒に取り戻すことができるよう、これからも定期的にワークショップを続けていく予定です。

resizeDSC02961.jpg

(笑いが絶えない小泉地区ワークショップの一コマ)

 

次回は、12月末に実施された「まちづくりワークショップ」についてご紹介します。