2012/06/08
Civic Forceのパートナーである気仙沼復興協会(KRA)は、宮城県気仙沼の仮設住宅でお茶会などのイベントを開き、住民の孤立化防止や地域の新しいコミュニティづくりなどのサポートを行っています。今回は、2012年5月17日~29日に市内の仮設住宅で実施されたKRA主催の落語会の様子を紹介します。
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港から1キロ以上離れた場所に打ち上げられた大型漁船が、今なお東日本大震災の爪跡を鮮明に残す宮城県気仙沼の鹿折地区。5月末、同地区にある旧・鹿折小学校仮設住宅に約20人の住民が集まりました。目的は、気仙沼復興協会(KRA)主催の落語会に参加するためです。
KRAは、震災後の2011年4月、被災した気仙沼市民によって立ち上げられた団体で、現在、清掃部、福祉部、写真部、ボランティア受入部などに分かれて、同市の復興に取り組んでいます。このうちCivic Forceがサポートする福祉部は、仮設住宅住民の孤立化を防ぎ、地域の新しいコミュニティづくりを支援するため、市内にある全93カ所(一関市含む)の仮設住宅すべてをまわってお茶会などのイベントを開いています。
巡回にあたっては、市内外のさまざまな企業やNGO、行政機関と協力して、イベントを開くこともあります。今回の落語会は、こうした活動の一環として実施されるもので、5月17日~29日に市内10カ所の仮設住宅で、落語家・三遊亭京樂さんによる「防災落語」が披露されました。
三遊亭京樂さんは、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに「防災落語」を始め、その後も新潟・中越地震で被災した人々や老人施設のお年寄り、学校に通えないひきこもりの子どもたちに向けて、ボランティアで落語を演じてきました。「落語によって少しでもたくさんの人を元気づけたい」と、防災落語だけでなく、「福祉落語」や「環境落語」など聞き手に合わせたさまざまなテーマを生み出し、海外でも公演しています。
京樂さん曰く、「防災落語」とは震災をテーマにした作品で、命の尊さや家族の絆について描いています。この日行われた防災落語の演題は、震災直後の産婦人科医院を舞台にした「天使の産声」。震災当日、電気や水がないだけでなく、医療にかかわるすべての物資が不足する中、妊婦が急患で運び込まれ、懐中電灯のみの灯りの中、手術を行おうと決意する医師と彼を取り巻く人々の心温まるストーリーです。素の姿のまま何人もの役を言葉と仕草によって演出する京樂さんの落語の面白さに魅了されるとともに、被災した方々に希望を与える内容に、聴きながら涙を流す人もいました。
公演後には、仮設住宅住民と京樂さんとの交流会が実施されました。仮設住宅で暮らす方々は、京樂さんからの質問を受けて被災当時の様子についてポツリポツリと話し始めます。「地震速報や津波の情報はまったく聞こえなくて近所の人に聞いて逃げることができた」「高台からまちが津波に飲まれていく光景が忘れられない」など当時の様子を振り返りながら、震災の教訓やこれからの世代に伝えたいことなどを話し合いました。そうした声を受け、京樂さんは、「東北の人はすごく我慢強くてその精神力から学ぶことは多い。その経験をもっと人に伝えたり、街の将来のことを話し合ってください」と力強いメッセージを伝えました。
現在、子どもたちに正しい放射線の情報を伝えるための「放射線落語」を考案中という京樂さん。長年、被災地に通いながら考えてきたことを落語に取り入れ、落語家として被災地のためにできることを考え続けています。
Civic Forceは、東日本大震災からの復興に真摯に向き合いながら活動する人々とともに、被災者のサポートを続けています。