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活動報告

被災地を支援する

2012/11/30

「まち歩き」で見える地域の魅力――NPOパートナー協働事業

変わる被災地のニーズに対応するため、2011年4月から続けてきたCivic ForceのNPOパートナー協働事業。地域の復興を見据え中長期的な視点で地域の活性化に貢献する地元団体を応援する第4期では、今年9月から、宮城県気仙沼市唐桑町のまちづくりに奮闘する「からくわ丸」へのサポートを開始しています。

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「巨釜半造(おおがまはんぞう)の“折石”は明治時代の津波のときに折れてそのままこの形に」「ここらは民宿ブームのとき、車の行列ができるほどだった」「熊野神社の由来は昔、和歌山からマグロをおいかけて来た漁師がつけた名前」――朝晩の気温が氷点下にまで冷え込む11月下旬、数人の老若男女が、野山から海に続く道々を行ったり来たりしながら何やら話しこんでいます。

ここは宮城県気仙沼市唐桑町にある12地区の一つ「中区」。普段は人通りの少ないこの土地に、この日、東京から夜行バスに乗って早稲田大学の学生8人がやってきました。目的は、「からくわ丸」が主催する「まち歩き」に参加するためです。1泊2日にわたって実施される「まち歩き」は今回で3回目。“よそ者”の若者がまちを歩いて地元の人にインタビューし、土地の食を味わい、地域の自然を観察するなどしてまちの魅力を知るとともに、地域の人々が外から来た若者と触れ合うことでまちの良さを再確認してもらうのがねらいです。

「まち歩き」の1日目は、3つのグループに分かれ、中区内にある3地区をそれぞれ地元出身の“案内人”とともに歩きます。まち歩きのルールは、「案内人にどんどん質問すること」。唐桑の海の美しさやリアスの壮大さ、今も残る伝統的な家屋など、他地域にはないものや疑問に思ったことを投げかけます。地元で暮らす人にとって当たり前の風景でも、客観的な視点で見れば“宝”になりうるものを見つけるのです。

約半日にわたってまちを歩いた後は、案内人の家に寄り、歩いて見て聞いたことを振り返ります。そして、2日目には、3グループが収集した情報を一枚の絵地図に落としこみます。地域の観光名所である海中公園や巨釜半造の折石、遠洋漁業の全盛期に建てられた豪壮な家屋「唐桑御殿」、都会では珍しい木の電柱、震災時に活躍した井戸などなど、一人一枚のカードにそれぞれ見聞きした情報をカラフルな色や絵を交えて書き込みます。

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こうして出来上がった絵地図は2日目の午後、地元の住民たちに向けて発表されました。会場となった中集会所には、これまでで最多の約20人の地域住民が、「どんなふうにまとまったかな?」と集まってきました。学生たちの発表が始まると、地元の人たちは「うんうん」とうなずきながら、ときには「実はここに古墳があるんだよ」「昔はもっとたくさん祭りがあってね」など、前に出て子どもの頃の思い出話やまちの理想像を語り出す姿も見られました。また、案内人を引き受けた男性は、学生たちと一緒にまちを歩いたことで、「いつもは車で通る道をゆっくり歩いて新鮮な発見が得られた」「地元にいても知らなかったことがあった」と語っています。

他方、参加した学生たちは「唐桑の人はみんなやさしくて感激しっぱなしだった」「勇気を出して参加して良かった」「学ぶことばかりだったけど、まち歩きに参加することで被災地の応援につながるなら嬉しい」などと話し、感極まって涙を流す女子学生もいました。

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この日の発表会には、気仙沼市まちづくり推進課の職員も参加し、「復興には外からの力、若者の力が必要。地域に溶け込みながらまちを活性化させていく彼らの取り組みに注目している」と話しています。唐桑内の他地区から「うちの地区でもやってもらいたい」との声もあがっています。

からくわ丸ではこのほか、9月から毎月1回、唐桑のまちづくりを担う若者対象の「ルーキーズサミット」を開催しています。毎回15~20人ほどが集まるこのサミットでは、唐桑出身の20代~30代の若者と一緒に唐桑のまちについて考えたり、1980~90年代にかつて唐桑のまちおこしを先導していたゲストを呼ぶなどして、「若手にこそできる地域活性化」の方法を探っています。

次回は、唐桑のまちおこしに挑戦するからくわ丸のメンバーたちの素顔に迫ります。

 

動画:「まち歩き」について解説する加藤代表