2019/01/28
高校生78人と地域の大人たちが集結!
「普段は話す機会のない、いろんな先輩の話を聞けた!」
「人見知りな私が、今日は言いたいことを話せた!」
「これから大人になる自分にとって大切な時間になった!」
ーいつもはどこかクールで、ちょっと疲れていた高校生たちが、少々興奮気味にアンケートに答えています。
ここは、岡山県南西部に位置する矢掛(やかげ)町の農村環境改善センター。10月半ば、矢掛高校の生徒78人と、地域の大人や学生ら67人が集まり、キャリア支援プログラム「だっぴ」が開催されました。
「倉敷の奥座敷」とも呼ばれる矢掛町は、宿場町の面影が残る歴史情緒あふれる土地ですが、昨夏の西日本豪雨で約600棟が浸水被害にあうなど甚大な被害を受けました。矢掛高校の生徒も全校生徒約400人のうち82人が被災。幸いにもみな命は無事でしたが、豪雨の壮絶な体験はすぐに忘れられるものではありません。避難所から学校に通ったり、親戚の家を間借りするなど生活が一変し、体調をくずしたり、ストレスを抱えてしまう生徒も少なからずいました。
しかし、全校生徒のうち、被災した生徒は5人に1人。学校だけでは、被災した生徒へのケアを十分に行うことは難しく、多くの生徒が苦しい胸のうちを周囲に話せない状況が続いていたようです。そこで、岡山県を中心に中高生らのキャリア支援プログラムを展開するNPO法人「だっぴ」と矢掛高校などが協力し、矢掛高校の被災した生徒を対象とするプログラムを企画。心を開いて語り合い、未来にむかえる場を提供しようと、地域の大人たちに協力を呼びかけたところ、さまざまな職業に就く53人もの大人たちが集まりました。当日は、だっぴ事務局長・森分志学さんの司会のもと、「人から言われて気づいた自分の良いところは?」「進路を決める際に重視していることは?」「どんな大人になりたい?」などさまざまなテーマで対話し、大いに盛り上がりました。
アンケートの結果によれば、この日参加した高校生や大人全員が「参加してよかった」と回答。ほとんどの高校生が「自分への肯定感が強くなった」「将来に希望を持てる」と前向きな気持ちになれたようです。
だっぴ代表の柏原さんは、「だっぴは参加した生徒が魅力的な大人と出会い、交流し、気持ちが楽になったり元気な力がわいてくるような、きっかけづくりのプログラム。今回、最初は一様に緊張し、疲れた表情をしていた生徒さんたちが、交流するうちに明るい表情に変わっていった」と言います。西日本豪雨の被災地で実施するのは今回が初めてでしたが、このような機会がいかに必要とされているかを実感し、「これからも学校や教育委員会、地域の人たちと協力しながらできることを続けていきたい」と話しています。
真備町でも「だっぴプログラム」を実施
「より多くの子どもたちが、地域の魅力的な大人と対話する機会を提供したい」。そんな思いから、だっぴは11月、矢掛町の隣にある真備町でも「だっぴプログラム」を開催しました。
真備町は、今回の豪雨で最も甚大な被害を受けた地域ですが、会場となった真備公民館には、中高生24人、地域の大人や大学生17人が集結。それぞれの職業観や将来のキャリアなどについて語り合いました。
真備でのプログラムは、地域のお祭りの一環として実施。被災した中高生だけでなく、被災していない中高生にも広く参加を呼びかけ、震災の被害について知り、互いの心の距離を縮める機会にしてもらうことを目指しました。
Civic Forceは、西日本豪雨「NPOパートナー協働事業」の一環で、だっぴプログラムの運営をサポートしました。