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活動報告

被災地を支援する

北海道胆振東部地震支援

2019/01/24

【北海道地震】"木育"キーワードに子どもたちの居場所を取り戻すーNPOパートナー協働事業

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「自然の中で、子どもたちの表情はどんどん変わっていきます」

北海道で子どもや親子のための自然体験プログラムを展開する「いぶり自然学校」代表の上田融さん。長年、森をはじめ野外での遊びを通じて、子どもたちが大きく変化していく姿を見守ってきました。

そんななか、2018年9月7日、拠点を置く胆振(いぶり)地方で地震が起きました。最も被害が大きかった厚真町では、2016年の熊本地震以来2年ぶりと言われる震度7、近隣の安平町やむかわ町でも震度6が観測されました。この地震による死者は41人、負傷者は749人に及び、住宅の全壊・半壊・一部損壊の数は合わせて1万棟以上にのぼります。

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幸いにも大きな被害をまぬがれたいぶり自然学校は、地震発生翌日から苫小牧市東部地区や安平町、厚真町、むかわ町で倒壊家屋の解体や災害ボランティアセンターの立ち上げなどを開始し、社会福祉協議会や行政が動き出すまでの初動を担いました。そして、うまく引き継いだころ、全国からかけつけたボランティアの滞在拠点「SVC(スマートボランティアセンター)」を設置し、宿泊場所やミーティング・交流スペースを提供するとともに、地域住民との信頼関係を築きながら復旧に取り組む環境を整えました。

そして、もう一つ、いぶり自然学校が取り組んだのが、このSVCを拠点に地震の影響下にある子どもや親子に、「木育(もくいく)」というキーワードで、安心して遊べる居場所を届けるプロジェクトです。

木育とは北海道で生まれたことばで、2006年に「森林・林業基本計画」のなかで閣議決定された用語でもあります。それによれば、木育とは「市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるため、多様な関係者が連携・協力しながら、材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ、『木育』とも言うべき木材利用に関する教育活動を促進する」とあります。

いぶり自然学校では、まさにこの木育を取り入れた遊びの場を、ほぼ毎週末、被災した4地域で展開。”プレーパーク手法”と呼ばれる方法を用いて、子どもや親子が心地よく楽しめる場をつくり、子どもたちの心の拠り所を取り戻す活動を行っています。

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プレーパークとは、「自分の責任で自由に遊ぶ」をコンセプトにした冒険の場。その活動内容は、当日の天候や森の状況によってさまざまに変化しますが、たとえば太陽の光がまだあたたかかった11月には、川で魚をとって薪ストーブでご飯と一緒に焼いて食べたり、マイ箸づくりや棒まきパンに挑戦したり。雪が積もった12月には、凍った大きな水たまりに乗ってスケートをしたり、鹿肉をナイフで削って食べたり。3日間のお泊まりキャンプや、域内外の協力者と一緒につくったカフェでほっと一息つく時間もあります。

「それぞれの地域の森にはさまざまな特徴があって、多様な自然と交わりながら、子どもたちはどんどん夢中になっていきます。今回の地震が子どもたちに及ぼす影響ははかりしれませんが、これからも子どもたちが思いっきり遊べる場所を提供していきます」

こう話す上田さんは、かつて教員として北海道苫小牧市や穂別町(現むかわ町)の学校の教壇に立っていたことがあります。また、東日本大震災で被災した福島県や岩手県の子どもたちのための野外教育プログラムも展開。今回の北海道地震後には、かつて上田さんらのプログラムに参加した東北の子どもたちが「今度は自分たちが恩返しをしたい」と応援に駆けつけてくれました。

子どもだけでなく大人たちの心も解放できる場をたくさんつくってきたいぶり自然学校。これまでの経験とネットワークを生かしつつ、上田さんは今、震災後の地域環境を生かした新たな相互扶助システムの構築を目指しています。「次なる有事が発生してもすばやく的確な支援ができるよう、この震災を機にさらに強固なネットワークをつくっていきたい」と言います。

Civic Forceでは、北海道胆振東部地震「NPOパートナー協働事業」の一環で、いぶり自然学校の取り組みをサポートしました。

事業概要書(北海道地震_NPOパートナー_いぶり自然学校).pdf