災害支援のプロフェッショナル　Civic Force（シビックフォース）

Civic Forceは4月から、専門性のあるNPOや地元NPOと連携して被災者を支援する「パートナー協働事業」を展開しています。今回は、福島第１原子力発電事故の影響で避難区域に取り残された犬を保護しているNPO、ジャパンドッグスタンダードの活動を紹介します。

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故発生から8ヶ月以上が経過しました。今も多くの福島県民が放射線による危険や将来的な健康への影響などを回避するため、住み慣れた居住地からの避難を余儀なくされています。福島県によれば、避難者は「避難等指定区域」の住民にとどまらず、福島市や郡山市などの区域外も合わせて5万人以上が県外へ避難し、全国の仮設住宅や避難所、自治体から提供される雇用促進住宅、親族・知人の家、旅館・ホテルなどに身を寄せています。

福島の人々は今、慣れ親しんだ土地を離れ、将来への強い不安や焦燥感と闘っています。他方、人々が抱えるもうひとつの心配事は、福島に残してきたペットのこと。特に、家族同様に暮らしてきた犬の飼い主たちは、「3日で家に帰れる予定だったので当面のご飯だけ置いて置き去りにしてきてしまった」「野放しにしてしまってどこへ行ったか分からないが、生活が落ち着いたらまた一緒に暮らしたい」と、離れてしまったペットのことを心配しています。

家を離れるときに飼育犬を放して避難した人も多く、福島には半野犬化状態となった犬たちがたくさんいると言われます。そんな被災犬を救おうと、震災後、全国の動物愛護団体や個人のボランティアが福島の犬を保護し、保護施設の設置・運営などを行ってきていますが、もともと長期的な計画で設置されたものは少なく、収容頭数のオーバーフロー、専門家や人員の不足、運営費用が限界を超えるなど、さまざまな困難に直面しています。そして結果的に、病気の発生・蔓延や近隣の避難住民とのトラブルなどが起こり、犬たちを劣悪な環境に収容してしまうケースも増えているようです。他方、避難されている方々の中には、犬を家につないだままにして、えさやりのために避難場所から元の家へ定期的に帰宅する人もいます。原発事故の影響で避難生活が長期化していることにより、依然として住民生活の安全・安定、ペットの命が脅かされています。

こうした中、避難されている方などからの依頼を受けて、これまで10回以上にわたって福島県の南相馬市や浪江町、飯舘村各地に入り、放浪したり飼い主の行方が分からない犬たちを保護しているNPOジャパンドッグスタンダードは、ペットとその家族にとって最適な環境を目指し、また、山積する多くの課題に立ち向かっています。

ジャパンドッグスタンダードは、福島県から比較的近い場所にある栃木県那須塩原の広大な土地に被災犬シェルターを構え、3人の常駐スタッフが、保護してきた犬の飼育管理を行っています。犬たちの保護は、自治体や保護センター、他のNPOなどと連携し、犬の飼い主などから寄せられる情報を収集・整理した上で実施されており、特に、飯舘村からは動物保護に関する依頼を受けて優先的に保護活動を続けてきました。

理事長の岸良一さんは、「当初、福島にどれくらいの被災動物がいるのか、どこまで保護すべきか、見通しは立っていませんでしたが、被災者や協力団体から寄せられる多数の情報に応える形で活動を続けてきた」と言います。ジャパンドッグスタンダードは、もともと犬の飼育免許の制度化に向けた取り組みや、ペット雑貨店、ペットショップなどに対する支援、犬の殺処分センターを保護シェルターに変えるための活動などを行っており、以前からペット関連事業者や飼い主などと交流があり、そうしたネットワークが被災犬に関する正確な情報収集と、的確な保護活動につながりました。

しかし、これからの課題は、原発事故の長期化に伴い拡大が予測されるペットの飼育、管理、そして里親探しに関する問題に早急に対応することです。次回は、中長期的な視野に立って活動するジャパンドッグスタンダードの“専門シェルター”のプロジェクトについて紹介します。

関連記事　→http://www.civic-force.org/activity/activity-463.php

関連動画　→http://www.youtube.com/civicforceorg/#p/u/2/6ExY4_ex0HA

（那須高原近くに構えるジャパンドッグスタンダードのシェルター）