災害支援のプロフェッショナル Civic Force(シビックフォース)

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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/11/28

犬にとって最善の環境を追求するということ――協働パートナー紹介

前回に引き続き、Civic Forceのパートナー団体であるジャパンドッグスタンダードの活動を紹介します。被災犬一頭一頭に対するきめ細かいケアを徹底する同団体の活動は、犬にとって最善の環境を追求し、人間の心の癒しにもつながる“プロ”の仕事です。

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標高1,915メートルの茶臼岳や紅葉が美しい朝日岳など複数の山々が連なる栃木県那須高原。福島県の被災犬を保護するNPOジャパンドッグスタンダードは、そんな雄大な景色に程近い那須塩原駅から、15分ほど車を走らせた場所にあります。

ジャパンドッグスタンダードの拠点「ドッグビオ那須高原」は、もともと犬のテーマパーク“わんわんガーデン”だった施設を利用しており、約5,600平方メートルの敷地に、犬小屋や事務所、テント、プレハブなど7部屋を新設して運営しています。

理事長の岸良一さんによれば、「この場所を選んだのは、もともと犬のテーマパークだったから。近隣住民からの理解を得られており、たくさんの犬たちを収容するのに適していると考えました」。施設では、再度大きな災害が発生するなどプロジェクト実施期間中に何らかの緊急事態で犬の数が増えることを想定し、100頭規模の収容が可能な場所を選んだそうです。また、被災した福島からの距離が比較的近いながらも、原発事故による放射線量の増加などの安全性を鑑みて決めたと言います。

2011年11月現在、3人のスタッフが住み込みで常駐し、16匹の犬のケアを行っています。具体的には、獣医師との連携のもと、定期的な検診・治療、継続的な健康管理、食事や散歩、シャンプーなどの飼育管理、ストレスのたまりにくい空間づくりなどに努めています。

スタッフの一人で、福島県出身の八鍬めぐみさんは、「以前はレスキュー犬育成のための訓練に携わっていましたが、被災犬を助ける仕事があると聞いてジャパンドッグスタンダードで働くことを決めた」と言います。ドッグビオ那須高原には、飼い主の状況が落ち着くまで一時的に預かっている犬や、飼い主が見つからずに新しい飼い主を募集している犬、病気などのために終生この施設で暮らす犬など、それぞれ異なる境遇の犬たちが暮らしており、一頭一頭に対するきめ細かいケアを心がけているそうです。特に、一度発生するとすぐに他の犬にうつってしまう風邪や感染症が蔓延しないよう、空調管理や体調が悪い犬の隔離、薬の投与などを徹底しています。

「被災した犬たちにとって、できるかぎり最善の環境を用意してあげたい」。その思いを実現するには、日ごろの体力づくりや精神的な強さも必要ですが、八鍬さんらは「ここに来て元気になったり、最初は人見知りしていたのにだんだん懐いてくるようになるのが、おもしろくてやりがいがある」と話しています。

また、以前、飯舘村の飼い主が犬を引き取りに来た際、「この子と一緒に暮らせる環境が、生活再建の目標だった」と、涙が出るほど犬との再会を喜んでいた姿が印象的だったと言います。犬との再会は、震災以前は当たり前だった生活を取り戻すための象徴であり、生活を立て直すための第一歩と考える人も少なくないのかもしれません。ジャパンドッグスタンダードは、犬たちに衛生的で安全な環境を提供し、一番幸せな形で飼い主に戻すことを目標の一つとして掲げています。

日本や英国で長年にわたり犬のトレーニング活動を続けてきた理事長の岸良一さんは「犬はもともと人間としか共存できない生き物。今回のような被災犬を特定の人間が助け出すのは社会的に必要なことだと思っています。犬より人を助けるほうが先という意見があるのも知っていますし、被災者の中には『もう犬のことには触れないようにしよう』と、家族のなかで飼っていた犬のことを話すのがタブーになってしまったケースもあると聞きます。でも、犬を救うこと=飼い主の心を癒すことにつながると信じて、これからも活動を続けていきます」と語ってくれました。

住み慣れた土地を離れて暮らさなければならない被災者の状況を理解し、犬と人にとって最善の状況を探ることも、ジャパンドッグスタンダードの重要な仕事の一つです。里親交流会の開催や被災者との密なコミュニケーションなど細やかなケアも欠かさない被災犬保護のプロジェクトは、これからも長期化が予想される福島の問題と向き合っていきます。

(犬と一緒になって走る岸さん〈左〉と八鍬さん)

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(ドッグビオ那須高原は、犬のテーマパークだった場所を利用しています)

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(犬たちの部屋。加湿器や空調が設置され、体調管理に気を使っています)