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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/12/07

共同体の"創造"を目指して――協働パートナー紹介

宮城県気仙沼で11月23日に実施された「共に創ろう!東北マルシェ」は、地元の人々を中心に1,000人以上を集客し、大盛況のうちに第1回目の開催を終えました。今回の活動報告では、このイベントを主催し、震災前より活気ある新しい街の創造を目指すパートナーNPO「ネットワークオレンジ」について紹介します。

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「障がいのある人もない人も、みんながまちづくりの主役」をモットーに、2007年に気仙沼で設立されたネットワークオレンジ。障がいを持つ子どもの母親などによって立ち上げられ、障がい者の社会参加支援や児童デイサービスなどの福祉事業を続けてきました。地域の企業やNPOなどを巻き込んだまちづくり事業にも力を入れ、その取り組みは市内外で注目されつつありました。

東日本大震災では、ネットワークオレンジが拠点にしていた市街地の2事業所が被災し、事業の中断を余儀なくされました。しかし、震災直前に開所していたグループ・ケアホーム「アットホームオレンジ」は唯一被災をまぬがれ、この施設を拠点に事業再開に向けた活動を開始しました。ライフラインが断たれ限られた環境の中、これまでの活動を通じてつながりを築いてきた市内外の仲間のサポートを受け、3月23日にはライフラインの復旧と福祉事業の再開を果たしました。また、ブログを活用して世界中に支援物資の提供を呼びかけ、集まった物資を被災者へ定期的に配布しました。

「気仙沼は瓦礫の山と化してしまいましたが、愛する町を見捨てることはできません。震災に負けない気仙沼を、私たち市民一人一人の手により創り上げます」――その思いを実現すべく始めた中核事業の一つが、「共に創ろう!東北マルシェ」の取り組みです。

「東北マルシェ」は、震災でこれまでの仕事の在り方を見直さなくてはならない人たちが続出する中、被災した商店に新しい“学び”と“実践”の場を提供し、地域の復興につなげる試みです。具体的には、10月から2回に分けて、中小企業診断士による講習会やワークショップを実施し、実践の場として11月23日に「東北マルシェ」のイベントを開催しました。参加者は地元の新聞や口コミなどで呼びかけたほか、大きな被害を受けた陸前高田市や南三陸町にも、ラジオを通じて参加を募りました。その結果、地域の商店主だけでなく、商工会議所のメンバーや地元の高校生など、41人が集まりました。

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「実践型ビジネススクール」とも称される「東北マルシェ」のプログラムでは、まず自己紹介などを通じて参加者が相互に理解し、仲間意識を生む機会を設けました。次に、それぞれのビジネスプランを形にする作業として、顧客を意識した事業コンセプトづくりに入ります。参加者は、元水産加工業や飲食業など「店舗の再起を図りたい」という自営業者から、アクセサリーづくりなど「趣味を生かして何かやってみたい」という主婦、中には「何をしたらいいか分からないけど、面白そうだから参加した」人など、多種多様な目的があります。ワークショップでは、このようなそれぞれ異なる目標を紹介し合って意見交換し、その過程で、各自のコンセプトや計画を客観的にとらえる目を養います。また、講習では、マーケティングやプロモーションなど、ビジネスにおける基礎的な知識も習得しました。

「東北マルシェ」の全プログラムを担当した中小企業診断士の波多野卓司さんによれば、2回のワークショップのポイントは、「コミュニティービジネスの視点を養うことと、共同体づくりを目指すことの二つ」と言います。震災によって家庭や親族、学校、商店街など地域のあらゆる共同体が分断されつつある中、今必要なのは、ばらばらになった地域が新しい共同体をどのように再構築していくかということ。それぞれの商品の価値を高めるビジネス的な視点に加え、あらゆる年代や価値観の人が助け合いながら生きていくコミュニティーづくりにつながればと願って、プログラムを策定したそうです。

ネットワークオレンジの小野寺代表は、「当初、被災者の方に今回の事業コンセプトである『学びと実践のサイクル』が受け入れられるか心配でしたが、ワークショップでは、事業計画を発表して意見をもらうことで商店主の方が意欲的になっていく様子がうかがえました」と振り返っています。

こうした座学のプログラムを経て、実践の場となった11月23日のイベントでは、1,000人を集客し、開店一時間で完売した店、目標売上を早々に超えた店、完売後もその場で予約注文につながった店など、ワークショップの効果が現れた店舗もあり、出店前に抱えていた不安を吹き飛ばすほどの成果が現れました。ハンドマッサージやネイルアートの店を出したエステティシャンの女性は、「生活が落ち着けば被災者には“癒し”が必要になる。マルシェを通じて、将来的な出店も現実的に考えられるようになった」と話しています。また、「復興のために何かしたいが、一市民に何ができるのか」と一歩を踏み出すことができなかった人は、「好きなことをやって皆に元気をあげられることが分かった」「これからも売り上げアップを目指しながら、未来へチャレンジしたい」と意欲を燃やしています。

マルシェの開催は、今後も定期的に実施する予定で、12月12日には、今回の「東北マルシェ」を参加者全員で振り返るワークショップを開催します。こうした学びと実践のサイクルを繰り返すことで、店舗営業の質を高めていきます。そして、特に大きな被害を受けた気仙沼の中心市街地を活性化させ、震災前より魅力的な街並みの創造を目指します。

 

 

 

(講師の波多野さん。「震災で肉親を亡くされた方など、参加者の中には悲痛な思いを抱えている人も少なくなく、ときに各人の人生とも向き合うこの取 り組みは、私にとっても初めてのこと。難しさを感じることもありますが、皆で支えあう共同体を創造すべく、これからも長い時間をかけて支え続けていきた い」と話しています)

 

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(「東北マルシェ」参加者の中には、高校生の姿も)