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活動報告

被災地を支援する

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2012/04/04

「海と向き合う復興まちづくり」のモデルに――協働パートナー紹介

宮城県気仙沼市を拠点に、環境教育・森づくり・環境保全の活動を続けるCivic ForceのパートナーNPO「森は海の恋人」は、4月3日、東京・日経ホールで、シンポジウム「海と共に生きる~震災復興と森は海の恋人運動~」を開催しました(Civic Force後援)。このシンポジウムは、2011年12月に仙台で、今年3月には気仙沼で実施され、今回で3回目。東日本大震災発生後、海の生物や土木などに詳しい専門家とともに続けてきた海に関する調査の結果を公表するとともに、海と共にあるまちづくりについて提案しました。

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resizeIMG_0201.jpg2011年3月11日に発生した東日本大震災では、沿岸部を中心に広域にわたって甚大な被害が生じ、海の環境破壊と生物への影響が懸念されました。

「震災直後、海に生物が見当たらなくなり、海は死んでしまったのではないか」――2011年3月、そんな心配を抱いた森は海の恋人は、海の生物や土木などに詳しい約10人の専門家とともに気仙沼の海のモニタリングを開始しました。独自のネットワークを通じて、迅速かつ緻密な調査を開始した理由について、畠山重篤理事長は「海に恵みをもたらすのは森と海をつなぐ汽水域。気仙沼は地盤沈下により至るところが浸水して、干潟・湿地のようになったが、まちの将来にとって、生き物のゆりかごである汽水域の再生と活用がカギ」と語ります。

シンポジウム「海と共に生きる~震災復興と森は海の恋人運動~」は、これまでの調査の結果を公表するともに、海を恨まず、これからも海と共に生き続けることを選んだ同団体が考える「海と向き合うまちづくり」について伝えようと実施されました。

第1部ではまず、調査に参加した研究者のうち5人が登壇し、津波被害と海底がれきの実態、水質と底質の推移、魚や藻場など生物の回復状況、牡蠣や養殖の経過について報告。詳細なデータをもとに、陸に比べて海の回復状況の速さが確認された点や、同地域の主要産業の一つである牡蠣の成長が通常よりも早く進んでいることについても発表されました。

また、第2部のパネルディスカッション「海と向き合うまちづくり」では、京都大学の田中克名誉教授のコーディネートのもと、首都大学東京の横山勝英准教授と京都大学の吉永郁生助教、森は海の恋人の畠山信副理事長がパネリストとして参加しました。横山教授は、沿岸低地の土地利用の歴史と現在の状況について、具体的なデータを用いて解説。これらの歴史を踏まえて、汽水域の再生とまちづくりについて話し合いました。この中で、畠山副理事長は、唐桑の舞根(もうね)地区が高台移転に向けて住民自身がいちはやく手をあげた事例を紹介し、「これからのまちづくりは、住民たちが自分たちで“こういう町にしたい”と考え、行動していくことが大切。外から手を貸してくれる方々とつながりながら、魅力的な復興まちづくりのモデルをつくりたい」と語りました。

こうした議論を踏まえ、会場からは「調査の結果から、牡蠣の急成長の要因は判明できたのか」「唐桑のまちづくりは、他地域でも実行可能か」「女性の意見を反映することで効果的な復興につながることもある」などたくさんの質問や意見が寄せられました。

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また、終了後は、畠山重篤理事長が“フォレストヒーロー”として表彰されたことを記念して、「フォレストヒーロー受賞記念講演会」(三井物産主催)が開催されました。フォレストヒーローとは、国連森林フォーラム(UNFF)が森林の育成や林業の健全な発展などに貢献した人物を表彰するもので、気仙沼湾に注ぎこむ大川上流域で植樹祭や環境教育を続けてきたことなどが評価されました。畠山理事長は、牡蠣から始まった海と森をつなぐ物語や自然と共存した震災復興計画について語り、会場からは大きな拍手が寄せられました。

海の調査に関する報告と、これからの復興について考える森は海の恋人のシンポジウムは、次回5月に福岡で開催される予定です。

 

淡水と海水が混じりあう場所