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活動報告

被災地を支援する

2012/07/12

買い物から始まる人の"輪"――協働パートナー紹介(前編)

東日本大震災発生後、変わる被災地のニーズに幅広く対応するため、2011年4月から続けてきたCivic ForceのNPOパートナー協働事業。中長期的な視点を持つ地域復興のためのまちづくりをサポートする第3期・4期では、2012年6月末現在、9団体とともに9事業を展開しています。今回は、小規模な仮設住宅での移動販売を続ける「ありすボックス」の活動についてご紹介します。

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resizeIMG_0378.jpg真っ青な空と照りつける太陽がまぶしい6月末の朝。宮城県北部に位置する気仙沼市立松岩中学校隣の仮設住宅の駐車場一角に、数人の人だかりができています。軽トラックの荷台の前に並べられた野菜や調味料、お菓子などを選んでいるのは、仮設住宅で暮らす住民の方々。「野菜なぐなってしまったから買いに来たの」「今日はマヨネーズないの?」「この大根で漬物つけっから」などと買い物を楽しみつつ、軽トラックの隣に置かれた小さなパラソルの下でおしゃべりが始まっています。

「今日は暑いね」「ばぁちゃん、体調壊してない?」。トラックに積まれた商品を販売しながら笑顔で買い物客に声をかけるのは、被災した気仙沼で2012年4月に立ち上がったありすボックスのメンバーです。ありすボックスは、震災後、仮設住宅住民の孤立化や引きこもりなどを防ぐため、仮設住宅の“見守り活動”を続けてきた国際ボランティアセンター山形(IVY)の一事業を引き継ぐ形で活動を開始。現在、気仙沼に93カ所ある仮設住宅のうち、特に支援が行き届いていない比較的小規模の仮設住宅を中心に18カ所で、移動販売を展開しています。
 
仮設住宅の多くは、スーパーや商店などから離れた場所に設置されており、津波で車を流されてしまった被災者や体の不自由な高齢者など買い物の不便さを感じていました。この問題を解消しようと、すでにイオンやセブンイレブン、Big Houseなどの民間企業、みやぎ生協などが、大型仮設住宅を対象に、移動販売や巡回バスの運行、仮設店舗の設営などを展開してきました。他方、小規模仮設住宅での移動販売は、支援団体などが単発的に実施するにとどまっていて、多くの住民は、買い物を親戚や家族などに頼らざるを得ない状況が続いていました。
 
そこで、ありすボックスは、主に小規模仮設住宅を対象にした移動販売を開始。現在は、火曜から土曜の朝9時半~17時まで、1台の軽トラックで1日3~5カ所の仮設住宅を巡回しています。販売する商品の仕入れは、被災した商店の調味料や地元農家の野菜などを購入することで地域の流通を促すとともに、買い手にも商品選びを通して地域の情報が伝わるよう配慮しています。
 

resizeIMG_0388.jpgありすボックスの代表を務める小野寺大志さんは、「定期的な移動販売は、もともとコミュニティ支援を目的に始まりましたが、買い物の不便さを解消するだけでなく、被災した高齢者の生活リズムや楽しみを作り出すことにもつながっているようです」と言います。

被災した高齢者の孤立化が課題となるなか、仮設住宅の住民同士が互いに交流する場として、移動販売は徐々に定着し、最近では、トラックが到着するのをいまかいまかと待っている人もいるといいます。
 
 
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