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活動報告

被災地を支援する

2012/07/12

地域内でヒトとカネがまわる仕組みを――協働パートナー紹介(後編)

前回に引き続き、宮城県気仙沼の小規模仮設住宅での移動販売を続けるパートナー「ありすボックス」の活動について紹介します。

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2011年3月11日に発生した東日本大震災は、沿岸部を中心に大きな被害をもたらしました。大津波は、人々の住居だけでなく沿岸地域の主産業である水産業の施設を飲み込み、多くの人が家や家族だけでなく、職場も失いました。厚生労働省によれば、宮城、岩手、福島の被災3県の失業者は、震災直後の3月12月から2カ月間で10万人以上にのぼり、その後、回復傾向にあるものの未だ多くの人が仕事を見つけられていません。

こうした中、宮城県と県内市町村では、緊急雇用対策として、2011年4月に33億円を投じて臨時職員4,000人を半年間採用すると発表しました。しかし、この数は宮城県の失業者全体の1割にも達していません。一方、被災地では、仮設住宅が遠隔地にあり、食料品などの買い物ができない高齢者や、工場の片付けができずに事業を再開できない事業者、塩がかぶった土壌を取り除かなければならない農家など、復興に向けて多くの人手が必要とされていました。

そこで、被災した失業者と、人手を必要とする現場とをマッチングさせるために生み出されたのが、“キャッシュ・フォー・ワーク”という考え方です。この“キャッシュ・フォー・ワーク”とは、被災地における復興事業に被災者を雇用し、賃金を支払うことで、被災地の円滑な経済復興と、被災者の自立支援につなげる国際協力の手法です。この手法を東日本大震災の復興に取り入れ、外部のボランティアだけに頼るのではなく、地域の中で「人とお金が回る」仕組みづくりが、地域経済にとっても、個々の尊厳と自立にとっても最重要と考えられたのです。

「政府や自治体の支援が遅れがちな現場の状況を鑑み、市民社会がより迅速かつ柔軟に対応することが不可欠」。そうした意識のもと、ありすボックスの前身である国際ボランティアセンター山形(IVY)は震災から1カ月後の4月12日から、石巻市でキャッシュ・フォー・ワークプロジェクトを開始し、気仙沼市と合わせて80人以上の失業者を雇用してきました。

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ありすボックスが2012年4月から実施している小規模仮設住宅での移動販売は、そんなIVYが続けてきた事業の一つ。2012年3月にIVYの活動の一部が終了するにあたり、多くの利用者から「これからも移動販売を継続してほしい」との要望が寄せられ、メンバーが独立する形で、ありすボックスが立ち上げられました。

「仮設住宅で暮らす高齢者にとって、自分の目で見て選んで買い物したり、近所の人と会話する移動販売は、ちょっとした刺激になっているようです。こうした気付きは、今後地域の介護福祉の活動などにもつながるかもしれません」。こう話す代表の小野寺大志さんは、仮設住宅住民同士の会話の機会を多く作り出す移動販売の意義を見出しつつ、今後は売れ残りの野菜や食材を使ったお惣菜やお弁当販売など収益事業にもつなげていきたいと話しています。

震災後、被災地では、避難所生活から仮設住宅などへ人々の移動に伴い今まで築き上げてきた地域コミュニティの分散が大きな課題となっています。仮設住宅での滞在は一時的とはいえ、長期化が予測される中、新たな住民間での相互関係が今後の復興過程に向けて不可欠です。Civic Forceは、ありすボックスの事業へのサポートを通じて、引き続き地域のコミュニティ強化に貢献していきます。