2012/05/01
津波で失われてしまったまちの再生支援や新しいまちづくりへのサポートを行っているCivic ForceのNPOパートナー協働事業・第3期。前回に引き続き、宮城県気仙沼市の大沢地区で活動する気仙沼みらい計画大沢チームとの協働事業について紹介します。
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「敷地Aには北側に自家用車2台の駐車スペースがあります」「Bには南側に細長い庭を置いてはどうでしょう」――『大沢地区災害公営住宅(案)』の文字とともに詳細な住宅設計図が書かれた紙を掲げながら説明する若者。彼は、「大沢みらい集会」を実施するメンバーの一人で、東北芸術工科大学で建築を専攻する男子学生です。
2012年4月、宮城県気仙沼唐桑町大沢地区の高台にある小原木中学校体育館に、約70人もの人々が集まりました。主役は、この中学校に併設された仮設住宅の住民をはじめ、大沢地区の元住人たち。この日、地元有志によって立ち上げられた「大沢地区防災集団移転促進事業期成同盟会」の総会が開催され、その後、「大沢みらい集会」が開催されました。
「大沢みらい集会」を主催するのは、気仙沼に縁のある建築専攻の大学研究室(横浜市立大学・鈴木研究室、神戸大学・槻橋研究室、東北芸術工科大学・武内研究室など)の指導教官とその大学生によって構成される「気仙沼みらい計画大沢チーム」。期成同盟会結成後の8月から同地区での活動を開始し、大沢地区の集団移転を建築の観点からサポートしています。具体的には、過去の街並みを再現する模型作り、未来へ残すべきまちの記憶を語り合う「『記憶の街』ワークショップ」を市内で複数回、開催してきました。
「大沢みらい集会」はこうした活動の延長線上にあり、今回で6回目。これまでに、震災の経験や震災前の大沢地区について振り返ったり、大沢の良さ、今後の地区づくりに向けたアイデアを出し合うなど、様々なテーマで住民たちとの話し合いを重ねてきました。また、小・中・高校生など子ども向けのワークショップも実施され、そこで出された「これからの大沢」のイメージを全住民に発表する場も設けました。
この日は、複数の教授や学生が登壇し、防災道路や新しい災害公営住宅について、それぞれの調査や研究の結果をもとに住民への提案を行いました。また、大沢の歴史や自然、景観の特徴、魅力などに関するアンケートをとりながら「唐桑らしい景観」をテーマに、グループごとに話し合う場面もあります。
既成同盟会の熊谷光広会長は、「仮設での私たちの暮らしは日々をやり過ごすだけで精いっぱい。そんな中で、専門的な知見を持つ大学の先生や地元のことを一緒に考えてくれる学生さんたちと話す中で気づかされることは多い。心強い」と話しています。
他方、気仙沼みらい計画大沢チームに参加する教授は「大沢が今後どんなまちになっていくのか、今が正念場。専門家の視点で生かせることがあるなら、とまちづくりを手伝わせてもらっている」と言います。また参加学生の中には、「大沢が好き。将来もここで暮らしていくことも考えている」と、被災地との深い縁を感じながら町の復興に携わる大学院生もいます。
大沢みらい集会は、今後も大沢地区の人々の意見を引き出す場として、今後も数回にわたり開催していく予定です。また、住民と行政との調整役としても、気仙沼みらい計画大沢チームは、より長期的かつ現実的な視点で集団移転と向き合っています。