【インタビューVol.3】再建か解体か、揺れ動く気持ちに寄り添いながら ーRQ能登 醍醐陸史さん
2024年9月21日、記録的な大雨が降り、元日の地震で被災した能登半島が再び大きな災害に見舞われました。奥能登では流木や土砂が残ったままの場所もあり、住宅の浸水被害の全容はまだ見えていません。
二重の被害を受けた輪島市門前町で活動を続ける「RQ能登」代表の醍醐陸史(あつし)さん(写真右)にお話を聞きました。
岩手県から輪島市に駆けつけた伊藤聡さん(左)と醍醐さん。
ー輪島市門前町の被害について教えてください。
醍醐 石川県輪島市門前町は地震と豪雨で二重の被害を受けた地区が多くあります。特に海と山に挟まれた深見地区は、元日の地震の影響で道路が寸断されて孤立し、住民の皆さんはヘリコプターで避難しました。
9月の豪雨では集落の中央部を流れる深見川が氾濫して川の護岸がえぐり取られ、川沿いの生活道路が崩落。家々にも大量の土砂が流入してしまいました。地震後、風雨などで傷まないようにと板やブルーシートを使って補修をしていた家々も壊れてしまい、仮設住宅で避難生活をしながら、車で自宅まで通って清掃や片付けを進めている人もいます。
ーRQ能登はどんな支援活動を行ってきましたか?
RQ能登は元日の地震後、一般社団法人RQ災害教育センターの呼びかけに賛同した有志メンバーによって設立されました。拠点は、輪島市門前町馬場にある元電気店の事務所を他団体と共同で利用させてもらっています。
地震後は、主に海沿いの門前町剱地(つるぎぢ)地区で、被災した屋根瓦や壁などの片付け・運搬などを続けていました。車での送迎や墓石の片付けなど、家屋の復旧以外の依頼にもできるだけ柔軟に応え、6月からは災害関連死を防ぐために仮設住宅に通って見守りの活動も始めました。最初は住民の皆さんとの関係性をどう気づいていくか、少し戸惑いもありましたが、少しずつ困り事を言ってもらえるようになってきました。
そんな最中に豪雨が起き、孤立している集落があると聞いて深見地区に入り、以来、全国から集まったボランティアの皆さんと一緒に、家屋に入りこんだ土砂の撤去や清掃などの活動も続けています。
ー被災した住民の皆さんは今、どんな思いで過ごしているのでしょうか。
この地区では、居間のよく目立つところに大きな仏壇があるおうちが多くありますが、家に入って片付けを始めようとすると、「まずは仏壇から」と仰る方も少なくありません。家屋の片付けより前に墓石を元の位置に戻してきれいにしたいという依頼もあります。代々受け継いできた土地や家を大切にする気持ち、そして脈々と続いてきた歴史の重みを感じます。
余震が続いたり、新しい仕事についたり、地区を離れる人もいますが、「ここでの暮らししか考えられない」と残る人もいます。「地区のみんなで岩のりを取って品評会をやるのが楽しみだった」「畑をもう一度耕したい」など、皆さんと話しながら、災害が起きる前の地区の様子を垣間見ることもあります。
先祖代々の家を失い、生きがいだった漁業や農業もできなくなり、人生の終盤で大きな傷を負ってしまった人たちのために、何ができるだろうかと考え続けています。地域を守り、育ててきた皆さんが、せめて少しでも望む生き方ができるように手助けできればと思います。
ー醍醐さんやRQ能登のボランティアの皆さんは東日本大震災のほか、各地でボランティアとして支援活動に携わってきた方もいらっしゃいます。
私は普段、金沢市で児童指導員として働いています。東日本大震災のときはRQ唐桑の活動に参加し、活動しました。
能登の地震後、RQからの呼びかけで「RQ能登」の活動に参加するようになり、本業の仕事の傍ら被災地での活動を継続しています。
点在する被災集落に適切な支援を届け、支援の偏りを防ぐためには、効率的な体制とボランティアさんの協力がカギになりますが、東北や九州などで被災したり支援したりした経験のある皆さんも含めてたくさんの人が協力してくれています。
特に現在、RQ能登の事務局長を担う伊藤聡さんは、地震後すぐに岩手県から能登に駆けつけてくれて以来、輪島での支援活動を続けています。東日本大震災では釜石の旅館の再建と地域の復旧活動に奔走し、現在は一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の代表として活動していますが、全国のネットワークやボランティアコーディネートの経験が豊富で、私もたくさんのことを教えてもらっています。
ー重々しい土砂を撤去したり、床下を乾燥させたり、一つの家屋を片付けるのは膨大な時間がかかりますが、活動を続ける中で意識していることはありますか?
被災した方のお宅から生活用品などを運び出す際は一つ一つ処分していいかどうか確認するなど、作業の完了ではなく、住民の皆さんのペースに合わせることを重視しています。
豪雨で被災した皆さんの多くは、再建か公費解体か気持ちが揺れ動いている最中ですが、まず被災した家屋を復旧させることで、未来に選択肢を残せると思います。どんな形で生活再建に向かっていくのか、応えを急かすことなく一緒になって考えることで、皆さんが少しでも前を向けるようになればと思います。
豪雨後、「もう家には住めない」とあきらめていた人が、私たちが家屋の片付けや清掃に入って少しずつきれいになっていく様子を見て、「また住めるかな」と言ってくれたことがありました。家屋の復旧には専門的な知識も必要で私もまだまだ勉強中ですが、これまで続けてきたことがむくわれたような気持ちになりました。
今回の豪雨災害は能登半島地震の緊急支援期から復旧期へと移行する最中に発生したこともあり、支援団体がすでに撤退していたりボランティアが集まりづらくなっていたり、人手不足の問題が本当に深刻です。特に今後、雪も降り、ますます人が集まりづらくなりますが、精神的に孤立した方を一人でも減らせるように、もう少し支援活動を続ける予定です。
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Civic Forceは、物資のオンラインマッチングサービス「Good Links」を通じて、RQ能登へマスクを届けたほか、ポータブル電源などを貸与しています。また、「NPOパートナー協働事業」では、ボランティアマッチング事業や門前町支援者連絡会議の調整などを行うRQ能登の運営をサポート。協働事業では畑や果樹の栽培を生きがいとしていた深見集落の皆さんが元気になれるよう、被害を免れた一部の畑や果樹園を「みんなの畑」としてシェアする活動なども実施していく予定です。
\RQ能登ではボランティアを募集しています/
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