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令和6年能登半島地震 NPOパートナー協働事業 物資支援 子ども

【インタビューVol.1】まだ出会えていない子どもたちのために ー「居ばしょ食堂」花田さん&五十嵐さん

能登半島地震の発生から11カ月。被災地の復旧・復興をサポートする「NPOパートナー協働事業」では、地震の被害を受けた石川県七尾市で、小さな駄菓子屋をオープンする計画が進められています。

不登校やひきこもりなど様々な悩みを抱える子どもたちに向けて「居ばしょ食堂」を運営してきた、一般社団法人ともえの花田敏輝さんと五十嵐真菜さんにお話を聞きました。

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――地域の子どもたちが気軽に集える場所として、地震が起きる前から「居ばしょ食堂」を運営されていました。設立の経緯を教えてください。

花田 障害者の支援を目的に、2016年に一般社団法人ともえを設立し、現在グループホームや就労継続支援B型事業所、居住支援の3施設を運営しています。事業を続ける中で、不登校やひきこもりなど様々な悩みを抱える子どもたちの存在を知り、2022年にビルの一室を借りて「居ばしょ食堂」をスタートしました。

 

2023年に七尾商工会議所主催の「七尾未来アワード」でグランプリを受賞したのをきっかけに、地域の商店が食材を提供してくれたり企業による金融講座を開いてくれたり、応援してくださる方も増えています。

――どんな子どもたちが利用していますか?

五十嵐 設立から今年10月までの利用者数は延べ950人以上。年齢は5歳から20代までと幅広く、主に不登校や引きこもりの子どもたちが利用しています。発達障害の児童も受け入れ、専門家の意見を聞いたり、地域の要保護児童対策協議会に参加したり、行政や学校、病院などと連携し、子どもたちが少しでも安心して過ごせるような運営を心がけてきました。

――2024年元日の地震で七尾市も大きな被害に遭いました。

花田 ともえが運営するグループホームや就労支援施設が地震で損壊し、事業を一時ストップせざるを得ませんでしたが、2月から就労の作業を再開。同時に、被災した子どもたちを一時的に預かるなどの支援を続けてきました。

――子どもたちは今、どんな状況に置かれているのでしょうか。

五十嵐 地震後、保護者の方からの問い合わせが増え、今も利用者は増え続けています。背景には、地震や余震の影響で、子どもたちの居場所が少なくなっていることが挙げられると思います。

 

発災から数カ月、市内の学校や保育施設、コミュニティセンターなどが避難所となり、遊具の損壊で使えなくなってしまった公園もありました。避難生活が長引く中、避難所で「子どもの声がうるさい」と叱られてしまった子もいました。

 

不登校や引きこもりの子どもにとって、安心して過ごせる居場所だった家が、地震で被害を受けたり、度重なる余震の影響で1人で過ごすことが難しくなったり、様々な理由でここへ来る子たちが増えているのです。

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――ここで子どもたちはどんなふうに過ごしていますか?

五十嵐 ゲームをしたり、本を読んだり、昼寝をしたり、思い思いにやりたいことをやって過ごしています。やりたくないことを無理にやらせたり、勉強しなさいと言ったりするのではなく、対等な立場で気軽に話ができる関係性になれるよう心がけています。

 

みんなで一緒に公園に行ったり、BBQをしたり、一緒にご飯を食べたりすることもあります。ここで友だちを見つけて元気になる子もいて、少し上の学年になるとカップルも誕生しています笑。

――パートナー協働事業では、駄菓子屋をスタートします。どんな目的やねらいがあるのでしょうか?

 

花田 居ばしょ食堂ガレージで、駄菓子屋のオープンに向けて準備を進めています。子どもたちがワクワクするような駄菓子をたくさん並べて、集まった子どもたちが交流できるような場をつくります。被災して崩れてしまった心のバランスや不安な気持ち、恐怖心などを吐き出せるような空間になればと願っています。

 

五十嵐 駄菓子屋を始めるのは、これまで居ばしょ食堂に来ていなかった子や地域住民の皆さんにも足を運んでもらいたいから。これまでたくさんの子どもたちを受け入れてきましたが、地震後さらに潜在的なニーズがあるのではないかと感じています。学校へ行けず、社会とつながるきっかけをつかめずにいる子どもたちは、大きな不安を抱えていますが、その期間が長くなるほど、どんどん外に出づらくなってしまう。人知れず苦しんでいる子がいるなら、そうした子どもたちと早くつながりたいと思っています。

 

まずは半年、駄菓子屋を運営し、ゆくゆくは公共交通手段が少なく自力で居ばしょ食堂に来られない子どもたちのところに出向く「出張駄菓子屋」も始めたいと思っています。

 

――子どもたちだけでなく、受験生など高校生に向けた自習室の設置準備も進めていますね。

 

五十嵐 居ばしょ食堂を運営する中で、受験を控えた高校生たちから「地震後、勉強する場所がなくなってしまった」と聞きました。地震の影響で駅前にあった自習スペースが勉強できる環境ではなくなり、図書館なども利用しづらくなってしまいました。

 

そこで、駅近くの建物の一室を借りて、机や椅子、空調などを整備して、冬場も快適に、集中して勉強できる環境を整備しています。

 

花田 地震の影響で、将来に不安を抱え未来が閉ざされてしまったように感じている生徒たちがいます。スペースを提供するだけでなく、学生ボランティアと連携して進路の悩みを聞いたり、地域の企業と協力してキャリアや金融に関する講座を開いたり、集まった高校生が一緒に学び合える環境も目指しています。

 

――居ばしょ食堂を運営する中で、不登校に対する差別や偏見を感じたりすることもあるそうですね。子どもたちが安心して暮らすためには、地域全体の理解も必要ですね。

 

花田 高齢化が進む七尾市では、高齢者への支援施策が優先されがちで、子ども支援が後回しにされていると感じることがあります。この事業を通して、地域全体で子どもたちをあたたかく見守るような空気をつくっていきたい。

 

日常を取り戻したように見えても、子どもたちの心身のダメージは計り知れません。

子どもたちが安心して地域で暮らせるようになればと願っています。

 

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