【インタビューVol.2】「皆さんの思いを乗せて、今日も走ります」 BIG UP石巻 岩田昇太さん
2024年元日の能登半島地震による石川県内の住宅被害はおよそ9万1,000棟にのぼり、このうち全壊と半壊はあわせて2万5,000棟余りとなっています。今年9月の豪雨災害で二重に被災した人も多く、継続的な支援が求められています。
「壊れた自宅を片付けたい」「解体の立ち会いに行かなければ」「戻ってお墓のお手入れをしたい」.....被災者の様々な悩みに応えるため、4月から車で送迎サポートを続けているのが、NPOパートナー協働事業で連携する、一般社団法人BIG UP石巻です。1月から能登に入って以来、被災者の皆さんを乗せて走り続ける岩田昇太さんに聞きました。
――岩田さんは1月に支援に入られてから今日までずっと能登での活動を続けられています。BIG UP石巻のこれまでの活動について教えてください。
BIG UP石巻は、2011年の東日本大震災をきっかけに立ち上がった団体で、東北での経験をもとに、これまで熊本地震や大阪北部地震、2019年の台風19号など各地の災害で支援活動に取り組んでいます。今回の能登半島地震では、2023年5月の地震以来つながりのあった珠洲市社会福祉協議会と連携して、1月4日から珠洲市での支援を開始。炊き出しなどを行う他団体との連携や社会福祉協議会との調整、物資配布など多岐にわたる活動を行ってきました。
2月からは姉妹団体であるBIG UP大阪が運営するシャワーブースや洗濯拠点の伴走支援を行ってきました。水道がなかなか復旧しない中、体を洗うシャワーや洗濯はニーズの高い支援の一つですが、様々な理由で公衆浴場などを使えない方に重宝されました。
日々の支援の中で見えてきたのは、いわゆる”交通弱者”の方々の存在です。道路が復旧してバスが動くようになっても、金沢駅から奥能登までの往復交通費は4,000円以上。駅までの移動手段がない人もたくさんいました。「戻りたくても戻れない」といった悩みを多く聞き、なんとかしければと、4月17日から移動支援の取り組みを始めました。避難者の方々のニーズに合わせた個別対応を心がけ、10月末までに延べ876人を送迎しました。
――移動支援のニーズはどのように変化しているでしょうか?
移動支援を始めた時は一時的だと考えていましたが、どんどんニーズが増え、地震の影響で職を失った方もドライバーとして雇用。この活動の趣旨に賛同してくれて、多い時には4台の車両を使って送迎支援を継続しました。7月には台湾の支援団体からの義援金受付に対し利用希望者が殺到したため休み返上で送迎したこともありました。8月は仮設住宅へ入居するなど移動支援を卒業される方も多く、利用状況は少し減少しました。
しかし、潜在的なニーズは減っていないと思い、9月に石川県や珠洲市、能登町、輪島市と協力して、二次避難者だけでなく、情報の届きにくいみなし仮設住宅の入居者などにチラシ4,000枚を配布。走行距離はどんどん増えました。
ーー9月の豪雨で奥能登地域は再び被害にあいました。その影響は?
9月21日の大雨を受け、一時それまで通りの送迎支援をストップし、能登半島から金沢方面へ避難される方を集中的に送迎しました。珠洲市や輪島市、能登町では停電、断水などライフラインにダメージを負い、土砂崩れなども相次いでいたためです。 BIG UPでは、これまでのつながりのあった珠洲市で泥かきや清掃、物資支援などの緊急支援を再び行いました。
通常運行を再開したのは、10月1日です。冬に向かうにつれて雪も降り、これまで通りの送迎は難しいかもしれませんが、まだまだ寄せられるニーズに応えるため、2月まで送迎支援は継続する予定です。
ーー岩田さんはこれまでどんな思いで支援を続けてきましたか?
出身は福岡県ですが、2011年の東日本大震災の際、NPO職員として宮城県石巻市で活動し、以来石巻に住んでいます。これまで災害が起こるたびに各地の被災地で支援に入ってきましたが、この「移動支援」を行うのは今回が初めて。被災者の自宅を片付けたり物資を届けたりといった支援以外にも、アイデア次第で多様な方法があると感じました。
移動支援は家屋の片付けや清掃といった現場作業とは違い、他の支援者と顔を合わせる機会が少なく、支援者自身が孤独になりがちです。でも見えにくいからこそとても大事で、こぼれがちな人への大切な支援だと感じています。
そんなこれまでやったことのない支援を始められたのは、Civic Forceの方が親身に相談にのってくれたからこそ。とても地味で見えにくい支援かもしれませんが、新しいチャレンジができ、この経験は次の災害でも生かせるかもしれません。
ーー 能登での活動の中で、東北の震災の経験が生かされている点などはあるでしょうか。
被災して新しい生活を始めたり家を再建したりするには、様々な行政手続きや制度の知識が必要となりますが、その点で東北の経験が生かされていると思います。送迎中に聞く困りごとの中には、行政支援や法律に関係する内容も少なくないので、行政とも連携しながら必要な支援につなげられるようにしています。
また、8カ月近く送迎支援の取り組みを続けてきて、リピーターの方も増えています。皆さん、地震で大切なものを失ったり生活がガラリと変わったり、本当に大変な思いをされています。親族の方の看取りに向かう送迎に付き添ったこともあります。
皆さんのお話を丁寧に聞きつつも、車内では明るい雰囲気で行き来ができるように心がけています。送迎をする車の中は狭い空間でもあり、悲しい雰囲気に包まれてばかりではみんな滅入ってしまいますので、人との会話を通じて少しでも前向きな気持ちになってもらえたらと願っています。
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