【インタビュー】「震災伝承の価値を広め、一人一人のいのちを守る」-公益社団法人3.11メモリアルネットワーク
「公益社団法人3.11メモリアルネットワーク」は、主に石巻市で震災伝承を深めていく「地域伝承推進部門」と、東北3県を中心に連携を広げていく「広域伝承連携部門」の2部門を軸に活動を行い、87団体・1088人のメンバーが参画しています(2025年5月26日時点)。2021年には復興祈念公園と震災遺構門脇小に隣接する石巻市門脇町に、伝承交流施設「MEET門脇」を設置し、震災学習の機会を提供しています。

専務理事・中川政治さん
Civic Forceの東日本大震災NPOパートナー協働事業では、2025年5月から第2期となる同団体の活動を支援しています。第1期では伝承活動の調査・分析による、震災伝承の意義の可視化と発信が行われました。第2期では伝承活動の意義をさらに深く追求するための追加調査とともに、語り部の質の向上や担い手育成なども見据えています。
精力的に活動を続ける公益社団法人3.11メモリアルネットワークの中川政治さん・阿部任さん・武田篤彦さんに伝承活動の現状や団体の活動、今後の展望についてうかがいました。

―まずは伝承活動や語り部の現状について教えてください。3.11メモリアルネットワークに現在所属している87団体・1088人の内、語り部の人数はどれくらいですか。
(中川) 「語り部をしている」として登録いただいているのは132名ですが、語り部の定義が幅広いので、数値で示すのは難しいと考えます。たとえば家族間や地域内で、なにげなく被災経験を語る人も語り部に当てはまるのではないかと。また、被災経験がなくても、ガイドという立場で伝承している人もいます。定義にとらわれることなく、さまざまなスタイルの語り部がいて良いと思います。団体としても、より多くの人に語り部活動に関わってもらえるような立場を目指したいですね。
―語り部として活動している方々の世代など、特徴的な傾向はありますか。中には海外の方向けに英語で伝承する語り部もいるのでしょうか。
(中川) 定年退職したリタイア世代・学生が多く、その中間層にあたる20代〜50代は少ないですね。実際、伝承活動で生計を立てることは難しい現状のため若者が定着しづらかったり、現役で他の仕事をしている世代は活動にあてる時間が取りづらかったり、などの事情も見受けられます。伝承施設でガイドとして語り部活動を行う人も含めると、世代の傾向はまた変わるかもしれません。英語で語り部活動を行う人もいますが、人数としてはかなり限られますね。海外の方向けの伝承活動については、自治体ごとに方針が異なるというのが現状です。

団体が運営する伝承交流施設「MEET門脇」
―伝承施設の来訪者について、世代ごとの傾向や人数の推移はいかがですか。
(中川) 最近は来訪者数が減少傾向にあるので、厳しい局面にあると言えますね。近年の状況については2023年に当団体が発行した東日本大震災伝承活動調査報告書で、各伝承施設の来訪者数、震災学習プログラムの参加者数の推移などを公表しています。また、一部伝承施設については高校生以下・大人、それぞれの来訪者数が示されています。施設によっては修学旅行で来る学生の受け入れに力を入れていますね。あとは県外から来る人が6割、市外から来る人が9割といった状況です。これらのデータから見えることとしては、伝承施設が全国から来る次世代への学びの場となっていることです。だからこそ、伝承は被災地だけで支えていくのではなく、全国で支えていくべきものではないかと考えます。
―伝承活動の実施形式について、現地型・オンライン型・派遣型の各需要の状況はいかがですか。
(中川) コロナ禍ではオンライン型が多かったのですが、それ以降は減っていきました。福島県など自治体によっては派遣型に経費補助がつく場合もあります。現地型については伝承施設の来訪者数とも連動しますので、来訪者増加に向けて伝承活動の質の向上や語り部のスキルアップにも注力していきたいです。

左から:スタッフの阿部任さん、武田篤彦さん
―語り部活動や震災伝承について、子どもや若い世代に興味を持ってもらうための取り組みや工夫点はありますか。
(阿部) 語り部の中には聞き手の世代に合わせて語り方を変える人もいますし、子ども向けの語り部活動を行う人もいます。また、視覚的に理解しやすいように、親しみやすい絵柄や漫画、絵本、紙芝居を活用した伝承活動も取り入れています。当団体が運営する伝承交流施設「MEET門脇」の子ども防災学習コーナーでは、漫画家・井上きみどりさんによる被災体験漫画を活用した展示動画を常設していますので、ぜひ若い世代にも見ていただきたいですね。
―Civic Forceのパートナー協働事業は今回2期目となりますが、どのような活動を予定していますか。
(中川) 1期目で得た知見や調査結果をもとに、持続可能な伝承活動の実現に向けた事業を行います。1つ目の事業、「評価指標の活用と担い手育成」では、各地の語り部へ評価指標を活用したフィードバックを行い、語り部活動の内容や話し方に生かしていただきます。また、東北大学の学生と連携し、被災当事者ではない学生を語り部として育成していく予定です。
2つ目の事業、「震災伝承調査による伝承の意義・評価指標の共有や発信と追加調査」では、新たに「心の復興」の評価指標を設定します。具体的には語り部活動の参加者に対し、語り部の話を聞くことが、心の復興へどう寄与するかを計る質問ができたらと考えています。
(阿部) 学生の語り部に関しては、対価を得ながら責任をもって実施してもらうことも検討しています。そのためには学生自身の目指す姿・目標が必要だと思うので、今後作成する評価指標を活用していく予定です。また、私自身が過去に語り部として活動していましたので、そのときの経験も踏まえながら、担い手育成や語り部のスキルアップに貢献していきたいです。

―貴重なお話をありがとうございました。最後に、団体として2期目にかける意気込みや目標を教えてください。
(中川) 今回特に大切にしたいのは伝承活動を継続させていくという視点です。最近は補助金など行政の支援も縮小傾向にあるため、伝承活動は大変厳しい境地に立たされています。今期2つの事業を通じて、震災伝承・語り部活動の意義を広めるとともに、長期的に継続させていく流れを生み出し、より多くの人に伝承活動へ関わってもらいたいです。「災害が起きたら、伝承活動をしよう」というサイクルが自然と発生するように、当団体の活動を被災地の前向きな一歩につなげていきます。また、これまでも日本が過去の災害から教訓を得てきたように、防災の観点からも伝承活動を停滞させてはいけないと強く認識しています。
災害からいのちが守られる社会の実現に向けて、伝承活動の底上げを図り、その価値を社会に広めようと尽力する公益社団法人3.11メモリアルネットワークの活動をCivic Forceは応援します!
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