【台風19号(2019年)】水害を耐え抜いた古民家 みんなで修復再建
Civic Forceの「NPOパートナー協働事業」では、2019年10月の東日本台風で甚大な被害を受けた長野県長野市長沼地区の「しなの長沼・お屋敷保存会」の活動をサポートしています。
本日、しなの長沼・お屋敷保存会が取り組む伝統民家再生プロジェクトのクラウドファンディングがスタートしました。保存会事務局長の太田秋夫さんは、「古民家・米澤邸は4年前の台風19号で被災しましたが、地域のみんなの力を結集して修復・再建に取り組んでいます。伝統構法の素晴らしさを体験できる場として、また地域内外の人が集まる場として、定着していくために皆さんの力を貸してください。災害が増える中、民間の力で復興させたモデルケースとして後世に伝えていきたいと思います」と話しています。応援よろしくお願いいたします!
(以下クラウドファンディングページより)
2019年10月の東日本台風で長野市長沼地区で千曲川の堤防が決壊し、甚大な被害が出ました。あれから3年10カ月。住民の暮らしは徐々に日常を取り戻してきましたが、被災体験はさまざまな課題を浮き彫りにしています。
地区内899世帯の99%が床上浸水となり、全壊・大規模半壊の判定は643棟に上りました。その後、公費解体制度の活用や自主解体で住家258棟、倉庫・蔵480棟、その他建物を含めると970棟が解体の道をたどりました。空き地が増えて100箇所(令和4年1月現在)にもなり、草が生い茂って、その管理にいま苦慮しています。
この解体された建物の中には、いまでは容易に作ることができない土壁作りの伝統構法を用いた立派な古民家や土蔵が多数含まれています。建物が大きく修復再建に多額の資金が必要なこと、建物を引き継ぐ者がいないこと、左官などの職人が見つからないことともに、公費解体制度活用の申し込み締め切りが早かったため、十分な検討をしたうえで判断するというゆとりがなかったことも大きな理由になっています。
長沼は水害常襲地帯であるにもかかわらず、古民家や土蔵がたくさん残っていました。それは伝統構法の作りが水害に強いことを示すものと言えます。終戦後(昭和20年代)、長沼ではりんご栽培が好景気であったことが後押し、大きなお屋敷がたくさん建てられました。土壁の家も多く、大きく長い一本の木で梁をつくるなど立派な作りです。それが長沼らしい景観を生み出していました。
今回の台風で、構造的には損傷しなかったものの、修繕の方法に関する知識が不足していたこと、修復再建の費用が捻出できず、一方で公費解体という災害対策の制度があったこと、さらにコロナ感染症の拡大で住民同士がお互いに情報を共有する機会を失ったことなど様々な要因が重なって、素晴らしい古民家が取り壊されてしまったのです。
200年前(1818年・文政元年)創建の古民家「米澤邸」は、すぐ横を濁流が押し寄せたものの(冒頭の写真)、奇跡的に損壊を免れました。
米澤邸は、所有者が幸いにも理解のある方で、「個人の力量では修復は不可能だが、みんなで力を合わせて資金を集め利活用できるよう修復再建するのならば、地域のコミュニティーの場として使ってよい」との決断をし、申請していた公費解体を取り下げました。みんなが力を合わせれば、200年前の「文化財級」の古民家を後世に伝え、そこを人々が集う場所として活用することが可能になったのです。
伝統構法の建物の内容と意義を多くの人に知ってもらい、後世に承継していく取り組みともなるこの事業は、「伝統的な技を持っている職人と私たち市民が一緒になって進める修復再建」にしたいと考えています。
いま毎年のように各地で災害が発生し、貴重な古民家が姿を消していく現実があります。私たちは、この事業を通じて、〈先人が「結」の力で今日まで承継してきた伝統的な古民家を、再び「結」の力で未来に遺していくこと〉〈力を合わせれば被災という困難を乗り越えて修復再建することが可能であること〉を示したいと思っています。それが、今を生きる私たちの責務であると自覚するからです。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2020年、日本が申請した「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の無形文化遺産登録を決めました。宮大工や左官職人らが古くから継承してきた17分野の技術の価値が世界的に認められたのです。日本の伝統的な建築文化を後世に伝えるためにも、米澤邸を守る必要があると考えています。
3年計画で修復再建を進めてまいります。今回のクラウドファンディングでは、その第一段階として建物の基礎や傾きの修正に使わせていただきます。今回の当面の目標額は200万円です。職人の技の見学やワークショップによる体験をリターンとして設定しました。また長野県そして長沼らしい品物のリターンもご用意しました。
修復再建によって、地域の文化施設として活用できます。様々なイベントや学びの場として賑わいを生み出し、それは被災地の復興へとつながります。この事業の趣旨にご賛同いただき、伝統的古民家の再建と被災地復興という事業に、あなたもぜひご参画ください。
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