「家も仕事もつぶれたけれど」
2024年元日の能登半島地震発生からもうすぐ1カ月が経ちます。石川県によれば、県内で確認された死者数は238人、倒れた家の下敷きになった人や津波にのまれた人など未だ行方がわからない人の捜索活動も続けられています。住宅被害は4万4,937棟にのぼり、県内501カ所の避難所に14,512人が避難しています(1月30日現在)。
Civic Forceは空飛ぶ捜索医療団"ARROWS”の一員として、能登半島最北端の珠洲市などで企業と連携した物資輸送や医療チームのサポートなど緊急支援活動を展開してきました。奥能登2市2町(珠洲市・輪島市・能登町・穴水町)への道路が寸断され、4トンや10トンの大型トラックでの物資輸送が難しい状況の中、能登半島の玄関口である七尾市と珠洲市の2拠点に倉庫を構え、両地域を小型車で行き来する物資輸送プロジェクトを実施。珠洲市の避難所や孤立地区などで活動するスタッフが被災した方々のニーズを吸い上げ、物資管理専門のスタッフが要望に基づく物資をできるだけタイムリーに届けています。
21日からは珠洲市内で再開した銭湯「海浜あみだ湯」の敷地の一角で衣類や飲みもの、衛生用品などを配布する取り組みを開始しました。Civic Forceの猪俣森太郎は、銭湯の前で物資を受け取った男性の言葉が印象的だったと振り返ります。「60代ほどの男性に物資を渡したとき、『家も仕事もつぶれたけど、いいもんもらえた』と笑顔を見せてくれました。大切な財産を一瞬にして失い途方もない絶望にくれているはずですが、その笑顔に私も救われました。ささやかでもお力になれたのかなと思えた瞬間でした」。甚大な被害を前に、無力感を感じることもありますが、支援は微力であっても無力ではありません。そう信じて私たちは支援を続けています。
ARROWSがこの1カ月で被災地へ届けた物資は100品目以上にのぼります。
多くの物資をできるだけ早く被災地へ届けられるよう尽力してきましたが、背景には平時から連携する企業の皆さんの協力があります。特に物資の調達にあたっては、緊急災害対応アライアンス「SEMA(Social Emergency Management Alliance)」との連携なくして実現できない支援も多くありました。SEMAは日本初の民間主導による緊急災害対応組織で、熊本地震後の2017年にヤフー(現LINEヤフー)とA-PADジャパン(現Civic Force)がなどが共同で設立し、2023年12月現在で81の企業、6つの市民団体が加盟しています。
SEMAの設立趣旨は、自然災害の多い日本で大規模災害時に一刻も早く、ひとりでも多くの被災者を救うこと。災害発生時には、現地に入った加盟NPOが被災者のニーズを確認し、その情報に基づき、加盟企業の間で調整を行い、必要とされる量だけ支援物資を提供する。物資は加盟企業の協力で被災地へ輸送し、市民団体によって被災者に届けられる仕組みです。
きっかけは、過去の熊本地震などの経験から、被災地に必要以上に物資が集まってしまうと被災地に負担をかけてしまうという反省があります。私たちが必要とする物資をSEMAに要請し、必要なものを必要なだけ、必要なタイミングで届けられるようにすることで、支援の効率性を高めるのが狙いです。届けた物資や被災者の声は企業の皆さんへできるだけタイムリーに報告し、信頼してもらうことで、次にまた大きな災害が起きたときも安心して預けてもらえる関係性を大切にしています。
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