【NPOパートナー協働事業】歯科診療と仮設住宅訪問で防ぐ「病気」と「孤立」
能登半島地震から10カ月以上が経ちました。復旧・復興の途上で、追い打ちをかけるように発生した9月の能登水害。「もうどうしていいかわからない」「心が折れそう」と被災者の皆さんの悲痛の声が聞こえてきます。
地震直後から継続して能登を支援してきた私たちCivic Forceは今、大雨で家屋に流入した土砂などを取り除く復旧支援と地域の課題に中長期的な視点で対応する復興支援と、両輪で被災地を応援しています。災害の残酷さと深刻な人手不足と向き合いながら、これからの能登にどのように心を寄せていけばいいのか、考え続けています。
11月、石川県のボランティア団体「のとささえーる」とのNPOパートナー協働事業がスタートします。歯科医の少ない奥能登で、被災者の皆さんの健康を守り、孤立を防ぐ取り組みを進めていきます。
ボランティア団体「のとささえーる」は、金沢市で障害者グループホーム「ハートの家」を拠点に活動するメンバーらで構成される有志グループで、1月の地震後、避難所生活が難しい障害者とその家族の受け入れを表明。障害福祉に関わる支援者からの相談や一時預かりなど、被災した人のニーズに合わせた支援を続けてきました。
また、宮城県の災害支援団体「一般社団法人BIG UP石巻」を受け入れるなど県外から被災地を目指すボランティアの拠点にもなっています。仮設住宅の整備が進んだ4月には、珠洲市の社会福祉協議会や社会福祉法人すず椿、BIG UP石巻などと連携し、定期的な見守り活動と専門家チームの派遣を開始。7月からは輪島市にある認知症グループホームや仮設住宅なども訪問し、障害者を含めた被災者の孤立防止に取り組んでいます。
Civic Forceはオンラインマッチングプラットフォーム「Good Links」で、のとささえーるに物資を届ける取り組みを続けてきましたが、10月からは「NPOパートナー協働事業」を開始。主に輪島市と珠洲市で、障害者や高齢者を対象とした訪問歯科診療を実施しています。
奥能登地域では、震災が起きる前から歯科医および歯科医院の数が少なかったと言われますが、被災後の状況はより深刻です。「診療を受けたくても受けられない」という被災者の方が増える中、本事業では石川県内外の協力医とともに、歯科通院が困難な人を訪問し、診療・治療を行います。
災害発生時の口腔におけるケアの重要性は2011年の東日本大震災の際にも注目され、心身の健康維持のために「適切なお口のケアが大切」と言われてきましたが、能登の被災地では今、充分な歯科診療が受けられずに体調を崩す被災者が多く、潜在的なニーズの高い支援と言えます。高齢者は移動手段がないと病院に行けず、口腔衛生状態の悪化が日々の暮らしに影響するリスクも潜んでいます。特に災害後、道路状況が悪化し、高齢者も障害を抱える方も、より歯科通院が難しくなっている現状を踏まえ、いち早く対処が必要です。
また、本事業では珠洲市内の仮設住宅を定期的に訪問し、被災した人々の孤立を防ぐ取り組みにも力を入れます。のとささえーるが発災後から続けてきた支援活動のネットワークや過去の災害の経験を生かして、定期的なイベントの開催やボランティア派遣なども継続的に行うことで、いわゆる「グレーゾーン(※発達障害の特性が見られるものの、診断基準をすべて満たしていない状態)」の方や認知症が疑われる方などを発見し、適切な支援につなげていきます。
「多くの被災者が仮設住宅に入居していますが、希望が叶わずかつて居住していた地域の人とは異なる団地に入居せざるを得なかった人もいます。これまでとは全く違う環境で新たに人間関係を構築することへの戸惑いやストレスから、家にこもりがちな人もいます。支援側も人手不足の状態が続き、細やかなケアが難しい中、すでに仮設住宅での孤独死事案が発生し、早急な対応が求められています」。こう話すのはのとささえーる代表の藪下佳代さん。日常生活に他者のサポートが必要な人がいれば専門機関につなぐなど、安心して暮らせるよう見守っていきたいと語ります。
生活再建のフェーズに入り、移り変わるニーズに応じた支援を、地元行政や社会福祉協議会、企業、支援団体などと連携しながら進めていくことが、地域復興の軸となります。障害者を含めた被災者の孤立化防止に取り組み、これ以上の災害関連死を防ぐ支援に力を入れています。
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