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東日本大震災 NPOパートナー協働事業

傷を負った子どもたちの心に寄り添い続けるーNPOパートナー協働事業

東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災。亡くなった人は15,899人、行方不明者2,527人。そして一人親となった震災遺児は1538人、このうち宮城県の震災孤児・遺児は800人以上にのぼります。

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「震災から 10 年がたち、多くの子どもたちが日常生活を取り戻しているように見えますが、震災のトラウマや家族を亡くした悲しみ、喪失感、怒り(グリーフ)は、一過性の支援では解決しません」。

こう話すのは、宮城県石巻市で震災遺児や不登校児、その親たちの心のケアを続けるNPO、こころスマイルプロジェクトの志村知穂さん。2011年の東日本大震災当時、神奈川県に住んでいましたが、石巻で支援活動をする中、行き場を失いかけた親子の存在に気づき、長期的な個別サポートの必要性を感じて、2012年にこころスマイルプロジェクトを立ち上げました。

幼少期に親や養育者が悲嘆状態にあって十分な愛情を受けられずに育ったり、亡くなったきょうだいの「身代わり」を演じながら生きていたり、愛着形成が不十分なまま育った子どもたちは自己肯定感が低く、衝動的・反抗的・破壊的な行動がみられます。また、表現力や自尊心、責任感などが欠如している場合が多く、不登校やいじめに発展するケースもあります。水害や地震が発生するたびに不安定になり、周囲の理解を得られぬまま我慢を重ねた結果、ひきこもりやリストカットなどの自傷行為や精神疾患につながることもあります。

こころスマイルプロジェクトでは、傷ついた子どもやその親たちを個別にサポートすることで、一人一人の”回復”を後押ししています。敷地内には公園があり、走ったりボルダリングをしたりエネルギーを発散できる場所があります。「子どもの場合、カウンセリングよりも遊びを通じて心を解放し、その後に気持ちや言葉が出てくることがあります」。家族を亡くした不安は簡単には話すことができないため、志村さんたちは色紙や絵を使ったアートセラピーを通じて、子どもの心の状態をそっと見守ります。

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「どうしてその色を選んだの?」「その形を作ったのはどうして?」「どんな気持ち?」 子どもたちが選んだ色や描く絵を見ながら会話を促すことで、少しずつ子どもたちが話し始めます。会を重ねるごとに、口を閉ざしていた子どもたちが徐々に心を開いていくことがあります。

セラピーを通じて、過去の辛い経験や心の奥の不安、悩みを吐露することができた子どもたちは、ひきこもり生活を抜け出して学校に行けるようになったり、親と対話できるようになったりします。志村さんたちは子ども

たちの心の状況を見ながら、個別訪問から食事の提供、学習支援、送迎支援に至るまで、一人一人に寄り添ったケアを続けることで、安心できる居場所となっているのです。子どもたちだけでなく、親子が一緒に参加する親子セラピーや親を対象とするカウンセリング支援なども実施しています。

他方、志村さんは「震災から時間が経ち、私たちの役割は終わりかなと思った時期もありますが、コロナの影響もあって、一度卒業した子どもたちがもう一度戻ってくることがあります。彼らがいざという時、いつでも帰れる場所が必要です」と言います。終わりのない「心のケア」の課題と向き合うために、グリーフケアの研修や勉強会に参加して学び続けているほか、専門家や医療機関、学校、PTA、地域住民などとの連携しながら、居場所を失った親子の存在を見つけ出す活動も行っています。

「もう大丈夫だと思っていた親子でも、突然、不安に襲われることがあります。孤児や遺児の話は複雑で話せる相手が限られます。だから、彼らがいくつになってもふらっと立ち寄れる場でありたいのです」。



Civic Forceは「東日本大震災支援事業」の一環で、こころスマイルプロジェクトの活動をサポートしています。



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