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東日本大震災 3 11を忘れない 新・夢を応援xNPOパートナー協働事業

【インタビュー】命を守る「企業の良心」を次世代へ -健太いのちの教室

Civic Forceの東日本大震災・NPOパートナー協働事業では、2026年4月から「一般社団法人健太いのちの教室」との協働事業をスタートしました。健太いのちの教室は、東日本大震災の津波で犠牲になった銀行員の遺族が設立した団体で、企業防災のあり方に一石を投じる「人命最優先」をテーマにした講演や研修を続けています。全国の災害や事故の遺族会とネットワークを構築しながら、次世代を担う若者や子どもたちに「いのちの大切さ」を伝える活動も行っています。

宮城県を拠点に活動する代表理事の田村孝行さんと、理事で妻の弘美さんに活動の現状や今後の展望について聞きました。

 

───「健太いのちの教室」は震災発生から8年半後の2019年11月に設立されました。まずは設立の背景について教えてください。

2011年3月11日の東日本大震災で、長男の田村健太(当時25歳)が津波の犠牲になりました。当時、息子は宮城県女川町の銀行に勤務していて、息子のほかにも12人が犠牲となり、今も遺体が発見されていない行員がいます。

息子は震災発生から半年後に見つかりましたが、それまでは暗中模索の中、雲を探し続けるような日々でした。でもいざ、息子を葬儀して送らなくてはいけないとなったとき、「健太の命を無駄にしたくない」と感じ、「これからも生かし続ける」「命を社会に役立たせよう」と誓いました。

亡くなった状況の検証には、ずいぶん長い年月がかかり、怒りがおさまらない時期もありました。勤務先の目の前には走れば1分で駆け上がれる高台がありましたが、行員たちは支店長の指示とマニュアルに従って高さわずか10メートルほどの店舗屋上に上がり、津波にのまれたのです。真実を求めて挑んだ裁判は、2014年に請求棄却、2016年の最高裁でも銀行側の法的責任は認められませんでした。しかし、組織の安全配慮義務違反が大きな争点となり、この震災の教訓を「想定外」で終わらせず、生涯をかけて教訓を伝えていこうと決めたのです。




───
「企業防災」を推進する取り組みについて、具体的にどんな活動に力を入れてきましたか?

「息子たちはなぜ逃げられなかったのか」。疑問の背景には、組織管理下において「命」よりも組織の論理が優先される構造や異議を問いづらい同調圧力、マニュアルや訓練の形骸化などがありました。安全対策の取り組み自体が目的化し、本質的なリスク想定や判断力の育成にまで踏み込めていなかったからです。

団体設立後、全国各地の企業から依頼を受けて、社内研修の実施や防災計画(BCP)の改善に携わってきました。人命第一の組織づくりや従業員の声を反映した「企業防災」をテーマに、企業や団体の職員に向けた講演も続けています。

例えば、南海トラフ巨大地震への備えを急ぐ静岡の銀行は、私たちの研修を通じて「職員の命を守る組織づくり」の重要性を認識し、研修や仕組みづくりに反映させています。顧客対応や店舗保全といった「業務の継続」よりも、まず「全従業員と顧客の即時避難・人命確保」を最優先とする防災計画を構築。災害発生時にマニュアルの硬直化を防ぎ、現場の判断で迷わず逃げ切れる組織風土・指揮系統を整備しています。

また、北陸の建設コンサルタント企業は、「業務再開」の時期や手法に重きを置いていた従来のBCP(事業継続計画)を見直し、「社員が生き残るための行動」を最優先のタイムラインとして組み込みました。「防災はコストではない」という意識を経営陣から一般社員まで共有する努力も続けています。


───女川にある「いのちの広場」を拠点に、東日本大震災の教訓を伝える活動も続けています。

息子が亡くなった女川町の慰霊碑の前で、ほとんど毎週末、ここで何があったかを伝える活動を続けてきました。最初は、大阪からやってきた女性に声をかけて、息子のことを伝えたのがきっかけです。あのとき何も話さなければ、彼女は何も知らないまま、立ち去ってしまったと思いますが、「伝えなければ伝わらない」という当たり前のことに気がつきました。

被災の経験を風化させず、「命を大切にする社会づくり」の一助になればと支店跡に通い続け、いつの間にかこんなに時間が経ってしまったというのが実情です。

女川地域医療センター下に設置されていた「いのちの広場」は、2023年6月、かつての銀行跡地に近い民有地に移設。「震災伝承施設」として登録認定を受け、単なる記念碑ではなく、学びの場としての役割を深めてきました。

───小中学校や高校、大学などでの講演活動も続けていますが、子どもたちにどんなことを伝えたいですか?

災害や事故の苦しみを自分ごととして捉え、他者への思いやりや生きる力を育む「命の学習」に力を入れています。学校や地域で、親の愛情や他者との支え合い、自分を大切にする心を育む講話を実施し、一人一人が災害に備える重要性も伝えています。

 

また、社会に出る前の「安全教育」として、大学の社会学ゼミナールなどと共同でシンポジウムを開催したこともあります。将来、企業の管理職や学校の教員になる若者たちが、上司の誤った指示に盲従せず、おかしいと思ったら声を上げる勇気や「心理的安全性」の大切さを学び、組織の安全配慮義務に関する実践的な知識を身につけています。企業がこれまでの「マニュアル通り」「形だけの避難訓練」を脱却し、現場の従業員が主体となって「空振りを恐れない」仕組みづくりにつながればと願っています。



───東日本大震災にかぎらず、全国の災害や事故で家族を亡くした遺族とも協力して活動していますが、阪神淡路大震災や日航機墜落事故の現場にも慰霊で訪れていますね。

昭和60年の日航機墜落事故やJR福知山線事故、東武東横線踏切事故、シンドラーエレベーター事故などは、背景こそ異なりますが、組織管理下において「守られるべき命が守られなかった」という共通点があります。遺族は、これまでそれぞれの立場で再発防止を訴えてきましたが、個々の事案が社会全体の構造的課題として十分に共有・検証されてきたとは言い難い状況です。遺族同士が横断的につながり、経験や教訓を社会に向けて発信していく機会を増やしていければと思います。



───Civic ForceのNPOパートナー協働事業では、フォーラムの開催や女川町の教訓を伝えるオンラインライブ、小学校への絵本の寄贈などを予定されています。事業を通して、どんなことを実現したいですか? 

今年秋に東京で開催予定のフォーラムは、企業の経営者や弁護士、災害・事故の遺族、学生やメディアなど幅広い層を対象に実施し、人の命を最優先に考える組織や社会のあり方について議論する予定です。

また、これまで女川で続けてきた「いのちの広場」のかたりべの取り組みを、オンラインで実施し、実際に女川まで足を運べない人にも東北の教訓を広く知ってもらう機会としたいです。

震災で亡くなった息子・健太の経験を、震災を知らない世代へ伝えたいという願いから、2024年に絵本『ふしぎなひかりのしずく』を出版しました。今回、この絵本を再版して学校や図書館に寄贈し、次世代に向けた防災教育も強化していきたいです。震災後に生まれた世代や当時を知らない子どもたちにも、防災やいのちの大切さについて考える機会を提供できればと考えています。

・Civic ForceのNPOパートナー協働事業と「伝承」の取り組み

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