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【連載 災害に備える】Vol.1 今すぐできる!気軽に始められる「備え」

今日11日は東日本大震災の月命日。NPOパートナー協働事業チームの小野寺幸恵が暮らす宮城県気仙沼市では、11日を「防災を考える日」とし、防災無線などで「家族で防災について考えよう」と呼びかけています。

全国各地で災害が増えるなか、一人でも多くの方に災害に備える大切さや具体的な防災情報をお伝えしたく、今月から毎月11日、連載「災害に備える」をお届けします。被災地出身・在住で被災経験のある小野寺から皆さんへ、少しでも役に立つ情報をお伝えできればと思います。第1回目は、「今すぐできる!気軽に始められる『備え』」をテーマにお伝えします。

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 2011年3月11日、私は気仙沼市鹿折地区で被災しました。当時、特別養護老人ホームで働いていましたが、施設の職員は防災に対する意識が非常に高く、日頃の訓練や備えの見直しのおかげで、幸いにも全員が無事に施設の2階へ避難できました。

 しかし、施設として災害に備えていても、職員個々の備えがあったかというと、決してそうではありませんでした。少なくとも私は、全くと言っていいほど何もしておらず…。恥ずかしながら「大津波警報」を甘く見ていました。「大津波」という言葉だけでは、その恐ろしさをイメージできなかったのです。

 施設の脇を流れる川を遡上してくる真っ黒な水を見た瞬間、これは大変なことになった…と、本能的に感じました。真っ黒な水はあっという間に川の堤防を越え、大きな漁船や家の屋根が流れてくるまで、そう長くはかかりませんでした。さらには火災が発生し、夜が更けるにつれ爆発音が近づいてくるなど、不安な夜を過ごしました。

 この夜、私たちが口にしたのは、施設の売店でかき集めたお菓子でした。3日間助けが来なかった場合を考え、お菓子を1日3食×3日×避難者の人数で割って1回で食べる量を決めました。もちろん、お菓子の大きさもまちまちなので、入居者を優先しました。結果、その晩職員が食べたのは1粒のチョコレートのみでした。12粒入った箱に入ったチョコレート、ありますよね。あのチョコレート1粒です。

 翌朝、私たちは、2階の倉庫に備蓄していたおかゆで簡単な朝食を済ませ、近くの高台にある中学校の避難所へ避難した。避難所にはたくさんの方が避難していました。自分たちの荷物には、備蓄していた非常食のおかゆや缶詰もありました。しかしそこは発災直後の混乱状態の避難所です。誰もが着のみ着のまま逃げてきて、食べ物がなかったのです。食料から少しでも目を離すと四方八方から手が伸びてきました。「すみません、これは私たちが施設で準備した非常食で、入居者の方のためのものなんです」と言うと、何やらブツブツと文句を言われてしまいました。申し訳ない気持ちと腹立たしい気持ち、両方が押し寄せてきて、ぐっと奥歯を噛み締めました。食べ物が十分でないことはわかっているのですが、私たちは施設の職員にとって、入居者を守ることが最優先で最大の義務でした。

    当時、避難所では食べ物の差し入れでトラブルになることも多かったと聞きます。空腹になると、人の心は荒みます。食欲は人間の三大欲求のひとつで、生存本能とも深く関わっています。空腹は不安を掻き立てられたり、イライラしたり、他人が羨ましく見えたり...。おにぎり1つ、飴玉1つでさえ、妬ましく思えてしまう、そんな瞬間があるものです。逆に言えば、飴玉1つで安心することもある、ということです。これは、どんな場所にいても同じです。だからこそ、ひとりひとりが非常食など小さな備えをしておくことが重要です。

    非常食というと、何年も保存できて少しお値段も張るイメージがあるかもしれませんが、長期間保存できるものでなくても大丈夫です。日常生活で口にするものを、1つ2つ多く買ってストックしておくだけで構いません。食べたら補充する、それだけで十分です。小さなお子さんがいるご家庭では、普段食べているようなおやつでもいいと思います。例えばポテトチップスは、効率的にエネルギーと塩分が摂取できたりします。

   

   災害時であっても日常生活と変わらず、馴染みのあるものを口にすることで精神的な安らぎを得る、これはとても大切なことです。「非常食」という名前に引っ張られすぎず、いつもの食べ物を1つ多く買っておき、食べたらまた買い足しておく…それだけで立派な備えになりますので、ぜひやってみてください。毎日通勤されている方も、いつどこで被災するかわかりません。今日は仕事帰りにコンビニに寄って、飴やミニサイズのようかん、キャラメルなどを買い、通勤バッグの中に忍ばせておきましょう。今のような暑い時期には、熱中症予防の塩分がとれるようなものも良いと思います。ちなみに私はおまけでもらったプラスチックのボトルに、マスクや絆創膏、電池や緊急時の連絡先を書いた紙と一緒に、ミニようかんや塩タブレットを入れて持ち歩いています。これについてはまた次の機会に詳しくお話します。

    手軽に、お金をかけずにできる備えはたくさんあります。みなさん、早速今日から始めてみませんか?

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