過去・今・未来を見つめるメッセージ Vol.3 ブックカフェ「フルハウス」柳美里さん
芥川賞作家で舞台俳優――。小説家の柳美里さんは今、福島県南相馬市で暮らしながら、小さなブックカフェを運営しています。インタビューシリーズ「過去・今・未来を見つめるメッセージ」の第三弾は、Civic Force(シビックフォース)の「NPOパートナー協働事業」で連携する「フルハウス」店長の柳美里さんとスタッフのみなさんです。
JR常磐線「小高」駅から徒歩2分。駅前の商店街を歩くと、右手にブックカフェ「フルハウス」が見える。2018年のオープン以来、地域の高校生や近隣住民から「ワクワクする空間」「素敵な本が見つかる場所」と親しまれてきた。新型コロナウイルスの影響で2020年4月末から閉じていたが、同年12月、再開に踏み切った。
店長の柳美里さんは震災後、臨時災害放送局「南相馬ひばりエフエム」でパーソナリティを務め、閉局の2018年3月までに約600人もの住民に話を聴いた。その間、鎌倉の自宅を売却して南相馬市に移住。原発事故によって荒れ果てた中古住宅を改装して開いたのが、フルハウスだ。
福島第一原子力発電所から20km圏内にある小高区は、2011年4月から警戒区域に指定され、長い間、立ち入りが制限された。2016年7月、一部の区域を除き、避難指示が解除されたが、13000人だった人口は3割まで減り、帰還者の約半数は65歳以上。無人駅となった小高駅周辺も閑散としている。
「人のつながりが物切れになってしまった。地震と津波と原発事故と、苦難の道を歩む人の"魂の避難所"のような場所になれれば」
<作家仲間たちが選書した書籍が並ぶ店内>
柳さんの小説『JR上野駅公園口』が、2020年11月、アメリカの文学賞「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれた。南相馬市出身の男性を描いたこの作品は「地域の皆さんとの交流の中で書いた」。受賞後、市役所や区役所に祝いの横断幕や垂れ幕が掲げられた。
「慣れないカフの運営は、実は舞台に立つより緊張します」と笑う柳さん。フルハウスには、かつて柳さんの演劇に出演した地元の若者も働いている。大熊町出身の白岩奏人さん(19歳)は「大好きなこの店で働けて嬉しい。地域の皆さんに親しんでもらえる店員になれるようがんばります」と笑顔を見せる。営業時間は火〜土曜 11:00〜18:00。
Civic Forceの東日本大震災支援事業「NPOパートナー協働事業」では、現在、岩手、宮城、福島をはじめ複数のNPOと連携して被災地の復興を後押ししています。
<地元の野菜や魚や肉などを使ったカフェメニュー>
1000年に一度の大災害といわれる東日本大震災の復興は、まだ道半ばです。Civic Forceではこれからも被災地のNPOへのサポートを通じて、東北の復興をあと押していきます。これからも一緒に応援してください!
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