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東日本大震災 NPOパートナー協働事業 3 11を忘れない

【3.11と伝承】「命を守る“語り”の力を被災地内外へ届けたい」インタビューVol.1

東日本大震災が起きた2011年3月11日からもうすぐ12年。
あの日被災した地域の「今」をとらえ、私たちが力を入れている「伝承」の取り組みについてお伝えするシリーズ企画「3.11と伝承」の第2弾は、NPOパートナー協働事業で連携している3.11メモリアルネットワークの中川政治(なかがわ・まさはる)さんのインタビューです。
3.11メモリアルネットワーク 中川政治さん

Q 東日本大震災からもうすぐ12年。復興はどのように進み、現在の被災地の状況をどのようにとらえていますか?

発災から時間が経ち、防潮堤や嵩上げ、災害公営住宅などのハード面の整備事業の多くは完了したとされています。他方、被災者主体の視点に立ったソフト面の取り組みは、成果が見えづらいためか、「人間復興」の視点は乏しく、「被災者の復興は巨大土木事業の片隅に追いやられている」と断じる専門家もいます。

発災2カ月後に開催された東日本大震災復興構想会議で「復興構想7原則」の一つに「教訓を次世代に伝承する」が掲げられ、「復興は地域・コミュニティ主体とし、国はそれを支える」と書かれています。また、2012 年の災害対策基本法改定により、「災害から得られた教訓の伝承」が住民の責務の一つとして追加されました。さらに、2019 年 12 月に定められた「『復興・創生期間』後における復興の基本方針」では、「民間団体が自律的・持続的に活動できる環境整備」が掲げられましたが、神戸や中越で設立された官学民の機構のような機能を持つ「官民コンソーシアム」は、東北では具体化していません。

今後予想される南海トラフ地震のような巨大災害では国民一人ひとりに自分の命を守る行動が求められますが、東日本大震災から学んだ避難行動や事前の備えに対する教訓や伝承活動の価値を可視化し、防災が日本の文化として根付いていくための取り組みが必要です。

Q 3.11メモリアルネットワークではどんな活動に力を入れていますか?

私が専務理事を務める公益社団法人3.11 メモリアルネットワークは、2022年10月、石巻で活動する3.11 みらいサポートと一体化など組織編成し、現在、個人メンバー703 人と団体 77団体(2023年1月時点)が参画しています。

2012年から、石巻圏域の震災伝承関係者の集まりであった「石巻ビジターズ産業ネットワーク」の「震災伝承部会」にて、伝承の連携について議論を重ね、3.11メモリアルネットワークは、2017 年 11 月に任意団体として発足しました。現在は、公益法人の広域伝承連携部門として、岩手・宮城・福島を中心に、広域の震災伝承に関わる個人・団体が「広域伝承連携メンバー」として参画しています。岩手、宮城、福島の広域メンバーから選出された運営委員を中心に毎月議論を積み重ね、県を超えた震災伝承関係者の人的ネットワークが形成されてきています。

震災伝承の連携・企画・人材育成を活動の柱とし、各地の伝承団体の情報発信、研修・講座開催、 交流会開催、会員主体のプロジェクト支援などを行っています。

Q 東日本大震災の被災地における「伝承」とは?

震災 10 年を目途に、各自治体は復興予算を活用して東日本大震災の教訓を伝える伝承施設や、震災遺構などを整備し、東日本大震災の実情と教訓を伝承する施設を「震災伝承施設」として登録する動きがあります。(震災伝承施設一覧へ)施設の新設に伴い、主な伝承施設への訪問者は増え続けている、震災直後から各地で続けられてきた「語り部」など住民主体の伝承活動は減少傾向にあり、今後の連携や相乗効果が望まれます。

自治体が整備する伝承施設には地域の防災力を高める役割期待されているものもありますが、あの時の大津波に対する教訓を抽象的に「とにかく、高いところへ逃げるべき」と発信されることがあります。全国各地で災害が増える中、津波の準備情報などの一定期間の備えが必要なケースや、津波以外の水害、土砂災害、原子力災害など、地域や個人の実情にあわせて、”自分事として考えてもらえる震災の教訓”を学べる環境をしっかり整備することが大切だと感じています。そのために、人から人へ直接伝える「語り部」の役割を、より多くの人に知ってもらえたらと活動しています。

Q ”自分ごととして捉える震災の教訓”とはどんなものでしょうか。

この石巻門脇・南浜地区でも多くの人が亡くなりましたが、たくさんの生存者の話を伺って、「すぐそこの山に登ることで、救えた命があった」ことを痛感しています。命を救ってくれるのは、山や石碑ではなく、私たちの判断や行動なのです。

「伝承施設ができたのに語り部も必要なの?」、「YouTubeで十分」と言われることがありますが、「自分もいざという時、こう避難したい」と実際の行動を促すのは、人の心を揺さぶる「語り」ではないかと考えていたところ、参加者の意識や行動の変容をアンケートで確認することができるようになってきました。

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Q Civic Forceの「NPOパートナー協働事業」での連携は、​​2022年2月から始まり、もうすぐ一年です。これまでの取り組みの成果と課題を教えてください。

Civic Forceの事業では、①震災伝承調査による伝承の意義・評価指標の可視化、②「3.11 メモリアルネットワークの組織体制整備」という2つのテーマを据えています。

被災3県の震災学習プログラムの参加者アンケートの調査結果などをもとに、震災学習を通じた意識・行動変容の状況を分析し、評価指標の検討を行っています。可視化された調査結果は語り部さんたちにフィードバックし、「語り」の改善に活かしてもらえるようにしています。伝承の意義の言語化・数値化の取り組みを通じて、東北各地の伝承活動を支えていきたいと考えています。

これらの事業を実施するためには、多様な伝承団体や語り部の活動の継続が欠かせません。そのために、私たち 3.11 メモリアルネットワークでは、今年度も総額約1000万円を13団体に助成する基金事業を実施するなど東北各地の伝承活動を支えています。日本で初めての民間伝承広域ネットワークが連携を強化し、語り部、家族、地域、学校、研究機関、企業など様々なレベルでの伝承活動を促すことで、将来の災害から命を守れる社会につなげてゆくことが、災害が多発する日本社会の大きな課題です。

 

阪神・淡路大震災後、「人と防災未来センター」の運営には、内閣府から毎年 2.5 億円の資金拠出や兵庫県の補助制度などの予算で地域住民による祈念事業や自主防災活動などが続けられていますが、東北3県においては、復興予算では民間の伝承活動への資金サポート制度は設けられておらず、命を守る重要な取り組みにも関わらず、自治体による災害の伝承に向き合った制度や資金は不足していると感じています。

石巻市の大川小学校で子どもたちの命を守れなかった教訓、福島の原子力発電所の事故により現在も続く避難区域の存在に関しては、そこに向きあい、語り続けてくれる存在が必要です。「自分が生きている限りは一生続ける」と覚悟を持った当事者の伝承活動は、これまでご本人の努力で成り立っており、支える賛同者や民間資金が必要です。

私は、発災直後の2011年3月に東北に一ボランティアとしてやってきましたが、自衛隊が、警察が、ボランティアが、誰がどれだけ泥だらけになって頑張ったとしても、その時にはもう多くの命は喪われ、取り返しがつかなくなっていたことに気づかされたのは、何年も後のことでした。

あの時、私たちが守れなかった命があります。

私は、あの日の体験を共有したわけではない立場ですが、「同じ悲しみを繰り返さないように」と活動を続ける語り部さんのつながりを広げ、次の災害から命を守る力を少しでも全国に届けられるよう、サポートしていきます。

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