震災の記憶を次世代の表現へ 「いのちのかたりつぎ」ワークショップを開催
「一般社団法人三陸まちづくりART」は、東日本大震災の伝承・防災・郷土芸能・国際交流を主軸とする複合的な文化芸術事業を実施しています。震災直後から活動を始め、2012年に地域の語り部(被災当事者)の証言を映像や音声で記録し、それを被災地の学校にデジタルコンテンツとして届ける活動を開始。その後、復興支援に携わっていたNPO法人等と連携し、国内外のアーティストを被災地に招いて、東北に滞在しながら創作活動を行うアーティスト・イン・レジデンスや芸能祭で地域の郷土芸能や暮らし・震災の経験に触れてもらう活動を続けてきました。(2017年に任意団体となり、2021年2月に法人化)
Civic Forceの東日本大震災NPOパートナー協働事業では、2025年12月から同団体の活動を応援しています。

震災伝承の取り組みとして、12月13日から計4回にわたり「いのちのかたりつぎ」ワークショップが開催され、石巻市圏、また仙台市に住む小学1年生から中学1年生までの12名の子どもたちが参加しました。被災地・石巻市の街歩きや語り部の話を通じて、それぞれが感じたことを演劇やダンスで表現する試みに挑戦。

第3回目のワークショップとなる12月21日、本事業プロデューサーの前川氏による進行のもと、子どもたちは震災についての学びを深めながら創作表現にチャレンジ。Civic Forceスタッフが密着した現場の様子をお届けします。
■地域の記憶に触れる

石巻市門脇南地区に住む地区会長であり「まねきショップ」を経営する本間さんは、地域の語り部として子どもたちに貴重なお話を共有しました。
石巻市立門脇小学校の歴史と震災: 明治6年に開校、2014年に閉校し、2022年からは震災遺構として一般公開されている石巻市立門脇小学校。震災時、地域の小学生たちとともに避難して助かった住民が多くいました。
震災時の過酷な状況: 雪が降る中での避難となり、避難先では上級生がブルーシートを広げて下級生を守ったエピソードも。先に下校していた在校生7名が亡くなったこと、地震・津波・火災が重なり、門脇小学校の校庭に避難した車に引火して多くの方が亡くなったことなど、痛ましい事実が語られました。
地域の現状: かつて700世帯あった門脇地区は、現在は約53名まで減少し、一人暮らしの方が多いことなども伝えられました。
本間さんのお話に真剣に耳を傾ける子どもたちは、「震災の記憶」をそれぞれの心に刻みます。
■感じたことを形にする
<模造紙ワークショップ>

本間さんのお話を聞いて感じたことを言葉や絵にするワークを行いました。子どもたちからは「どこに逃げたのか」、「車は何台燃えたのか」などの質問が飛び交い、大人のスタッフがそれらの声を拾いながら他グループにも説明。
また、印象に残ったこととして、「車の中で亡くなった人が多い」、「途中から雪が降ってきた」、「火災の被害があった」、「震災後の児童数」などが子どもたちから寄せられました。

続いて、子どもたちが感じたことを身体で表現するワークショップへと移ります。
<演劇ワークショップ>

グループごとに台本の読み合わせを実施。表現方法などは子どもたちの発想を取り入れながら進められました。なかには初めから身体を動かしながら内容を考えていくグループも。
<ダンスをつくろう>

チームごとに本間さんの話から「気になる言葉」を2つ選び、ダンスで表現。Aグループは「ブルーシート」と「雪」、Bグループは「坂道」と「足を踏んでごめんなさい」などをテーマに、積極的に意見を出し合いながら身体表現へとつなげます。2026年1月12日の成果発表会に向けて、全員で動きを通し、全体の流れを確認しました。

最後の振り返りの際、子どもたちからは、「気になる言葉をダンスでつくるのが楽しかった」、「本間さんの話を聞けてよかった」、「演劇の内容がすごく楽しかった」など、前向きな声が多く寄せられました。
また、子どもたちはこの取り組みの合言葉を「いのち」と掲げました。最後はその場にいた全員で、せーの「いのち!」と声を合わせ、この日のプログラムを締めくくりました。
震災を直接体験していない世代の子どもたちが、語り部の話で感じたことを自分の言葉や身体で表現しようとする姿勢は、未来へ記憶をつなぐ大切な一歩であり、「いのち」のリレーとなります。
Civic Forceは引き続き三陸まちづくりARTの取り組みをサポートし、持続的な震災伝承を後押ししていきます。
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Civic Force担当スタッフ・正木のコメント:
今回のワークショップでは、最初の自己紹介から最後の振り返りまで、子どもたち一人ひとりが「自分の言葉」で語り、「自分の身体」で表現することを大切にした場づくりが印象的でした。
被災された住民の方の語りを聞く時間では、門脇小学校や地域の出来事が、具体的な情景とともに語られました。 子どもたちはその事実を真摯に受け止め、それらの出来事をどのように自分たちの言葉や表現として他者へつむいでいくかを考え、自分の中に取り込みながら表現へと昇華していく、かけがえのない時間を過ごしていたように思います。
震災という自分たちが直接体験していない出来事を扱いながらも、どう向き合っていくのかを丁寧に考え抜かれているからこそ、子どもたちにとって「参加したい」「また来たい」と思える体験になっているのだと感じました。 出来事を一方的に伝えるのではなく、子どもたち一人ひとりの「いのちの感覚」に寄り添いながら、未来へと語り継いでいこうとする姿勢が育まれているように感じます。
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