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アジアに展開する

2012/11/07

【アジアパシフィックアライアンス】 組織の壁を超えて連携する日本発・世界初の仕組み――日本で設立シンポジウム開催

近年、地震や洪水などの災害が頻発するアジア太平洋地域において、少しでも早く一人でも多くの命を救うことを目的に設立された「アジアパシフィック アライアンス」。その設立シンポジウムが2012年11月5日、東京・日本財団ビルで開催され、企業、NGO、行政、メディア関係者など130人以上が足を運びました。シンポジウムでは、News Zeroキャスターの村尾信尚氏から「ノーベル平和賞を取ったEUにとって石炭鉄鋼共同体が始まりであったように、アジアでは災害支援共同体が、地域の融和を推進する役割を果たす可能性がある」と発言するなど、各方面の方々から熱い期待が寄せられました。

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日本がイニシアチブを発揮

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「アジアパシフィック アライアンスは、アジア太平洋地域で大規模災害が起きたとき、各国地域の企業・NGO・行政が各組織の壁を越えて連携することで、それぞれが持つ情報、人、資金、モノを各国間で共有・活用し、より迅速で効果的な支援を目指す組織」――シンポジウムの冒頭、まず海外からの参加メンバーを代表して、アジアパシフィックアライアンス理事長のファイザル・ザラル氏があいさつしました。

アジアパシフィック アライアンスは、2012年10月22~25日、インドネシアのジョグジャカルタで開催された「第5回アジア防災閣僚級会合」の正式企画として、初めてその設立を発表。それに続く日本での設立シンポジウムでは、ファイザル氏のメッセージを皮切りに、市民セクターとビジネスセクターが協力して主導する“世界初”の国際的な地域機関として、その発足をアピールしました。

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次に、アジアパシフィック アライアンス誕生にあたってのメッセージとして、構想段階から3年間にわたって支援を続けてきた笹川平和財団の茶野順子常務理事と、本構想着想の原点となったジャパンプラットフォーム設立にかかわった外務省国際協力局の梅田邦夫局長が登壇。茶野氏は、「アジアパシフィック アライアンスのカギは、“エンパワーメント”。災害被害からの復興のためには地元の人々やボランティアの力が重要であり、この新しい組織は、そうした地域のリソースに可能性を与え、かつ効果的な支援の仕組みの誕生を意味し、アジア人すべてが祝福すべきこと」と強調しました。また、梅田氏は、「アライアンス設立にあたっては、すでにジャパンプラットフォームやCivic Forceのように企業・NGO・行政間の調整機能を持つプラットフォームが日本に存在していたことが大きい。この新しい組織の設立は、災害時に限らず、アジアの市民レベルの社会融和にも大きな意義を有する」と期待の言葉を述べました。このほか、経済界からは、経団連国際経済本部の金原主幸部長がビデオメッセージの中で「日本のプレゼンスが低下したといわれて久しいが、ビジネスセクターを巻き込んで連携を目指す組織が実現したことは快挙。“民”主導のアジア発の連携組織に敬意を評する」と語りました。

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次に、アジアパシフィック アライアンスの大西健丞CEOが、アジアパシフィック アライアンスは「今までの規制概念ではとらえられない仕組み」として、ジャパンプラットフォームの設立からシビックフォースの設立の経緯、そして世界で最も自然災害被災者数の多いアジアにおいて、同種のプラットフォームを各国に設立し、地域間連携をしていく意義を説明しました。また、このことが、議会と役所だけが社会のさまざまな仕組みをつくる時代を終わらせ、各セクターが集まってそれぞれの強みを生かしながら社会システムをつくっていく、アジア型のサードセクター形成につながると解説。各セクターと協働しながら災害に関するマネジメントを実施していく決意を述べるとともに、このアライアンスの考え方は、防災分野だけでなく、福祉や環境の課題にも応用できると強調しました。

 

「ノーベル平和賞にも匹敵する」

また、パネルディスカッション「アジア太平洋地域に新たに誕生した新地域機関は何を実現するべきか」では、NEWS ZEROキャスターの村尾信尚氏(関西学院大学大学院教授)の司会のもと、ファイザル理事長と大西CEO、茶野氏のほか、大阪大学大学院教授でジャパンプラットフォーム副代表理事の中村安秀氏、外務省国際協力局民間援助連携室の山口又宏室長が登壇し、アジアパシフィック アライアンスが生み出し得る価値やインパクトについて活発な議論を交わしました。

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冒頭、村尾氏から、自らが大蔵省(当時)主計官時代に、日本のジャパンプラットフォームの設立の重要性に着目してきた経緯に触れつつ、「ノーベル平和賞を取ったEUにとって石炭鉄鋼共同体という、資源の共同活用という視点が域内融和、統合の始まりであった。アジアには、そうした共通軸がないだろうかと考えてきたが、今回の設立趣旨を聞いている中で、アジアでは災害支援共同体が、アジア版の石炭鉄鋼共同体として、地域の融和を推進する役割を果たす可能性がある」と期待を表明しました。

中村教授は、「今日、世界の課題解決の方法が変わりつつある。大きな国際機関が物事を解決するのではなく、ネットワーク、つまり一組織・一団体だけでなく、企業やNGO、行政などいろいろな立場の人が集まって物事を決める機会が増えている。アジアパシフィック アライアンス設立はその流れの中にあり、今後、アジア太平洋地域の社会の様々なシステム構築に先導的な役割を果たしていく」と語りました。また、山口室長は「アライアンスに賛同する立場から、この組織の価値を発信し具体的なサポートにつなげたい」と今後の展開に関する意志を表明しました。

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質疑応答では、「災害時、具体的にどういった機能を果たすのか」「アライアンスの中で行政はどんな役割があるのか」「海外のプラットフォームの仕組みは?」など多様な質問が寄せられ、村尾氏のファシリテートのもと、アジアパシフィックアライアンスの機能について、より具体的に議論を深めました。

そして「アジアパシフィック アライアンスの設立は、ノーベル平和賞受賞にも匹敵する組織のスタートでもある」として、バングラデシュのグラミン銀行や今年受賞したEUがそうであったように、かつて誰もやったことがない新しい挑戦は理解されないこともあるが、未来を変えるチャレンジであり、今回の設立は“ゴール”でなく、これからが本当の“スタート”だと解説しました。

アジアパシフィック アライアンスでは、今回のシンポジウムでの議論を踏まえて、引き続き海外のメンバーや日本側関係者と協議を進め、アジア太平洋地域における企業、NGO、行政の災害支援プラットフォームを構築するとともに、災害時に一人でも多く、少しでも早く救う体制づくりに努めていきます。

アライアンスが、災害時に迅速かつ効果的に機能する組織となるよう、引き続き、皆様の応援をよろしくお願いいたします。

アジアパシフィック アライアンスのHPはこちら→http://apadm.org/