災害支援のプロフェッショナル Civic Force(シビックフォース)

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2011/06/14

漁業復興への長い道のり

気仙沼漁港は日本で有数の漁港でした。気仙沼漁港は三陸沖を操業域とする漁船の主要な水揚げ港の一つであり、マグロやカツオ、サンマなどの遠洋漁業の基地でした。一方、唐桑地区や大島ではカキやホタテ、わかめの養殖漁業に従事している漁師も多く、気仙沼は遠洋と養殖とさまざまな海産物が集積する一大漁港でした。

市内には、それらの魚を下処理し、干物や缶詰などの加工を担う水産加工企業も多数存在し、漁業関係で相当数の雇用を支えていました。今回の震災では、漁港のほか漁船や養殖用いかだ、水産加工工場など、あらゆる施設が被害を受け、多くの人が仕事を失いました。気仙沼市にとって、漁業復興は地域復興と同義語ともいえます。

漁業と一口に言っても、その産業構造は何層にも重なり絡み合っています。漁船づくりやメンテナンスのために造船所があり、漁船に搭載する冷蔵・冷凍機や無線機のメーカーがあり、漁船の運航に必要な燃料会社があり、漁に必要な餌や網の資材屋さんがありました。水揚げした魚を出荷するための製氷会社があり、一時保存する冷蔵・冷凍倉庫があり、加工する会社がありというように一大サプライチェーンがありました。

現在、遠洋漁業のカツオ漁船が6月中にも入港できるよう、気仙沼漁港は荷さばき場や電源施設の修理を進めています。冷蔵・冷凍施設が被災し、水揚げした魚は生での出荷となるため、製氷会社や輸送会社の再開も急がれています。同様に、加工会社だけが復興目指して歩みを始めても、材料である魚を調達や保管、販路を担う企業が活動しないことには、実際に事業を始めることは難しい状況です。

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(気仙沼湾から臨む、気仙沼漁港と加工会社の集積地区)

水産業の一大サプライチェーンができていた気仙沼港は、水揚げ基地として遠洋漁業にとって重要な拠点でした。しかし今、寄港することができないとなると、遠洋で操業している漁船はほかの水揚げ港に行かざるを得ません。気仙沼港で卸業を営んでいた方は、従来のお客さんが離れないように、ほかの港にまで足を運び、商品を手配する方もいるそうです。ほかの港で水揚げすることは一時的な措置かもしれませんが、これを機会に新しいパイプができてしまえば、気仙沼港が復活した時に、新旧の商流間で競争が発生する可能性もあります。そうなる前に漁業を立て直すためには、スピードが重要。国内のほかの港と、そして海外の港との国内・国際競争にさらされる遠洋漁業において、復興までにかけられる時間はそう多くはありません。

気仙沼市内の加工会社を経営する方に話を聞きました。「気仙沼市の経済は、漁業と水産関連会社、そして漁業関係者が使う飲食店などを含めると約8割が漁業の関連産業で占められていました。ただ、商店街の疲弊や労働人口の減少で、東北経済は以前から冷え込んでいました。今回の震災で、工場も何もかもなくなりましたが、前の姿に戻すのではだめなんです。新しい仕組みを作らないといけないんです」

Civic Forceでは、緊急支援・生活改善フェーズから、復旧・復興フェーズへと支援体制を移行する準備を進めています。中でも産業復興の支援を中心に、地元の企業や団体の力を引き出し、伸ばすことを応援しています。現在、気仙沼地域などで復興に向けて積極的に動いている事業者に対して資金提供する仕組みや方法を外部の専門家とともに慎重に検討を重ねています。具体的にどのような形で漁業支援ができるか、引き続き調査を行っていきます。