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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/09/06

いつもと変わらないコンサートを―協働パートナー紹介

前回の活動報告から引き続き、宮城県や岩手県などで活動を展開するNPO「みんなのことば」の活動をご紹介します。

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NPOみんなのことばは、プロの演奏家によるミニコンサートを各自治体で3~5か所で展開しています。さまざまな困難により精神的な疲労状態にある被災者に、音楽を通して精神的活力を取り戻してもらうために設計したプログラムです。これまでも、都内各地で「聴く」「歌う」「演奏する」の3つの要素を大切にして実施してきましたが、今回はさらに音楽療法の考え方を取り入れ、被災地において適切なプログラムを構築してきました。実施にあたっては、地元災害対策本部や災害ボランティアセンターと連携して、ニーズを特定したうえで、各演奏場所の代表者や担当者と電話等で打ち合わせを行い、それぞれの会場で聴く方々の状況にあった演奏会を作り上げています。

これまでに、6月22日の宮城県・南三陸町(名足保育園・志津川保育所、伊里前保育所、伊里前小学校、歌津中学校)で300人の方へ、23日には気仙沼(気仙沼中学校、ホテル観洋(二次避難所)、紫会館(一次避難所))で150人の方に演奏会をお届けしました。以降、6月24日の気仙沼大島での250人、7月13日の岩手県・宮古市、14日の山田町・大槌町、15日の釜石市の保育園や小中学校、老人福祉施設などで実施してきました。

演奏が始まると感情的に涙を流し始めることも少なくありません。気仙沼では演奏を聴いた方々から「皆さんのハーモニーのように、みんなで力を合わせて復興に向けてがんばります」との力強い言葉をいただきました。「声を出して歌を歌う機関がないから、本当にありがたい」とか「すべてを津波で失ってしまったけど、こうやって楽しいこともあるんですね」というコメントも各地でいただきました。演奏会のあとは、音楽によって感情が開放された方々が、演奏者に津波のことや避難生活のこと、家族のことを話される方が毎回多くいらっしゃいます。

そして、8月下旬、Civic Forceのスタッフは大船渡市で開かれたコンサートを見学してきました。

訪れたのは、幼稚園と老人介護施設。津波被害によってこの幼稚園では、複数の幼稚園・保育園が同居中。老人介護施設でも、被災した家族を持った方が複数いらっしゃいました。

老人デイサービス.JPG

(老人介護施設での演奏風景)

演奏者はフルート、バイオリン、ビオラ、チェロの4人。CMなどでなじみのあるクラシックから、各世代に合わせた曲目をこなします。楽器を使うほか、手拍子で観客が演奏に参加できるシーンもありました。表情が明るくなったり、体を動かしたりと観客もリラックスして演奏を聴いていました。演奏終了後には、自ら感想を伝えに、演奏者へ歩み寄る方がたくさんいました。

大船渡市には、数年前に完成した文化会館「リアスホール」がありますが、たまにコンサートがある程度で、普通に生活をしている限りでは、生の音楽に触れる機会はありません。現在、リアスホールは避難所として使われています。コンサートを鑑賞した幼稚園の先生は「一生に一度、生のコンサートを聴くことができるかもわからない私たちにとって、ほんとうにありがたい」と演奏者に語りかけていました。

NPO代表の渡辺悠子さんは「人によって感じ方が違うのが、音楽の良いところ」と言います。被災地でのコンサートでは、「聴く」「歌う」「演奏に参加する」ことを通じて、音楽の持つ効果を自然に実感してもらいたいと考えています。6月に南三陸町で開いたコンサートは、再開して間もない保育園を訪問。演奏する喜びを取り戻してほしいとの思いから、ドイツの子どもたちが手作りケーキを売って集めた寄付金を使って購入したカスタネット100個を届けました。

被災地で行っているコンサートの内容は、通常時と変わらないと言います。それに対して「被災地であることを特別に意識するのではなく、いつものように全身全霊を込めて演奏している」と演奏家は語ります。これまで、首都圏を中心に活動していた演奏家たちが、被災地でもいつも同じような高いクオリティーで音楽を提供できること自体が、NPOみんなのことばの被災地支援だと言います。

一度きりのコンサートですが、できるだけ多くの方へ音楽を届けられるよう、みんなのことばは岩手県から宮城、福島まで広範囲で被災地を訪問しています。コンサートを通じて知ることができた被災地や被災者のこと、そして活動そのもののことを、東京で支援している方々にも知らせるため、年明けにも報告会コンサートを開く予定です。