2013/07/03
外からのノウハウ集めるシンクタンクとして
「気仙沼市の観光戦略を推進するため、この組織が域内外のヒト・カネ・ノウハウを一元的に集めるシンクタンクとなり、地域で再配分することで長期的な産業復興につなげたい」
――7月3日、「一般社団法人リアス観光創造プラットフォーム」の開所式が宮城県気仙沼市内の同プラットフォーム事務所で開催され、菅原昭彦理事長(写真)が大江真弘副市長や行政関係者、地域内外の企業、NPO、メディア関係者らを前にあいさつしました。
この日からさかのぼること約16カ月前。気仙沼市では、震災後の観光産業の落ち込みを食い止めるため、地域内の観光業関係者や外部のアドバイザーなど総勢24人の委員からなる「気仙沼市観光戦略会議」を立ち上げ、2012年3月から毎月1回、食や地域文化を活用した観光メニュー、震災の経験や教訓、復興への過程を新たな資源とするツアーの実施など、観光を基幹産業として確立させるための具体的な施策を話し合ってきました。1年にわたる会議の集大成として、2013年3月末、「観光に関する戦略的方策」をまとめ、「気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦略」と「水産業と観光産業の連携・融合による新たな付加価値創造戦略」という二大戦略を含む7つの戦略を提示しました。
しかし、戦略をつくっただけでは何も変わりません。そこで、戦略の中身を地域の人々と共有し、観光業に直接携わる事業者だけでなく、気仙沼で暮らす市民一人一人と広く連携しながら実現していくため、2013年4月に「リアス観光創造プラットフォーム」を設立。6月末に一般社団法人化を実現しました。
各事業者の創発的な取り組みを様々な角度から支援するこのプラットフォームには、市内の観光関係者に加え、市外の旅行会社やメディアなども参画。外からの新しい視点を取り込むことで、内外協働の復興まちづくりとして、「観光」を再定義していく役割も期待されています。観光に関するこれまでの計画は、あくまで行政が議題を設定し、それを受け、市民を交えた委員会が検討・答申していましたが、被災した気仙沼の現状を踏まえると、行政の外側に資金・権限を有する機動的な機関を設け、観光関係者や市民の発意を促しつつ、事業を具現化していくことが求められます。
リアス観光創造プラットフォームは、戦略に即した民間事業者や市民団体、NPOなどが提案する事業への「助成」、また将来的には三陸海岸全域を対象に、一定規模以上の事業に対する投融資を視野に入れた出資・融資や専門家によるアドバイスなどを行っていきます。また、今年度の具体的な事業として、資源の掘り起こしに向けたフィールドワークの実施やモニターツアー、商談会・シンポジウムの開催などを予定しています。
実効性ある組織体制を確立させるために
中長期復興支援事業の一つとして「観光再生プロジェクト ~“訪れたいまち”に向けた官民協働の仕組みづくり」を掲げるCivic Forceは、2012年3月の気仙沼市観光戦略会議発足当初から、会議の運営を支えてきたほか、同会議内に設置された5つの部会のうち、「基本方針案検討部会」「コミュニケーション部会」などに参加し外部者の視点で観光誘客の環境づくりに向けた提案をしてきました。また、内外の専門企業と協力して観光戦略立案のための先進事例の調査・分析や重点戦略の提案を行い、観光に関する戦略的方策づくりの後押しをしてきました。
そして、この戦略を具現化するための仕組みとして立ち上がった「リアス観光創造プラットフォーム」では、理事として参画。財源と機能を持つ組織として実効性のある体制をつくるため、今後は中長期復興支援事業及びNPOパートナー協働事業の両スキームを生かしつつ、サポートを続けていきます。