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2011/07/20

被災地の漁師たち―廃業を決めるひと、奮起するひと

東日本大震災で被災し、急ピッチで復旧作業を終えた各地の漁港では、7月以降ほぼ毎日、漁船が入港し、海産物が水揚げされています。気仙沼市魚市場では13日、福島県沖で捕れたカツオを積んだ宮崎県の漁船が入港しました。巻き網船に続く、一本釣り船のカツオの初水揚げ。気仙沼漁港には6月末に巻き網漁船が入港して以来、連日カツオが水揚げされています。河北新報によると、一本釣りのカツオは昨年の取扱量のうち8割を占めており、一本釣り船の入港をきっかけに気仙沼は本格的なカツオ漁のシーズンを迎えるようになります。南三陸町でも4日に、水ダコが水揚げされ、漁港は活気を取り戻しつつあります。

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(連日、カツオ漁船が水揚げをしている気仙沼市魚市場)

今回の震災では遠洋・近海漁業の多くの船が流され、養殖漁業者もワカメやカキ、ホタテの養殖いかだが壊滅的な被害を受けました。港町にとって漁港の復活と漁の再開は復興の弾みになりますが、目を凝らすと漁師個々人の事情は複雑です。

「家も、船も失った漁師に対して、家も無事、船も無事、漁も大漁という漁師もいる。自分は船4隻と加工場と家を無くして、仮設住宅暮らし。保険金は降りるけど、家を立てておしまい。漁にはもう出ないよ」。南三陸町のとある漁師さんのように、廃業を決めた漁師も多数存在します。近海漁業や養殖漁業の漁師たちは、個人事業主のようにこだわりを強く持ち漁を続けてきましたが、震災をきっかけに無事だった船を手放したり、やむを得ず共同で養殖を始める方もいます。また、仲間が船を失ったため、自分の船は無事にもかかわらず遠慮して漁に出ない漁師もいると聞きます。

魚の売り手も苦労しています。気仙沼の市街地で被災を免れた魚屋はわずか。無事だった魚屋には顧客が絶えません。気仙沼で水揚げされたカツオ以外は、仙台魚市場などほかの市場から仕入れています。「カツオを100本仕入れても、午前中には売り切れる。最近は見たことのないお客さんも多い」。この魚屋では例年、カツオよりもサンマの時期が全国発送で忙しいそうですが「今年はどうなるかわからない」。

津波による被害の大小がありましたが、時間を経つにつれてその差はどんどん広がっています。ただ、震災から4カ月が経ち、すべてを失った漁師や水産関係者も奮起しているという話が地元紙をにぎわしています。北海道沖で7月下旬から解禁されるサンマ漁に向けて、知人から借りた船で出港した気仙沼市の漁師たちがいるほか、自宅や店舗を津波で失った仲買業者も、カレイやアイナメ、タコなどを地元の漁師から直接買い付ける「浜買い」で、市内の鮮魚店に地元の魚を卸して喜ばれているケースもあります。

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(気仙沼市内の漁具卸会社や浮きメーカーには、生産が追い付かないほど注文が舞い込んでいる)

Civic Forceでは、気仙沼市唐桑地区の一部で進んでいる、まちづくり復興支援事業の一環として、カキの養殖支援を進めています。唐桑地区では震災をきっかけに個人での事業廃止を決めた生産者らが合流し、共同での再建を進めています。中間支援団体であるCivic Forceでは、復興のデザインを描く地元の方々へのサポートが今後の中心事業になっていきます。支援団体としてできることを提示し、情報提供を重ね、信頼関係を築くことで、被災者の方々が少しでも立ち上がりやすくなるような環境を作り出すこともCivic Forceの役割です。