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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2011/08/08

被災地で理解が広がる心のケアの重要性―協働パートナー紹介

 

Civic ForceがNPO愛知ネット(愛知県安城市)と展開しているパートナー協働事業では、心のケア事業を展開するため、岩手県大船渡市に臨床心理士を派遣しています。大船渡リアスホールの避難所駐車場に設置したトレーラーハウスをカウンセリングルームとして活用するほか、避難所や仮設住宅への巡回カウンセリング、心に傷を負った子どもたちとの接し方についての教師や保護者に向けた講習会を開いています。

巡回カウンセリングの様子.jpg

大船渡リアスホール設置しているカウンセリングルーム.jpg

カウンセリングルームには毎日1件程度の相談予約が入ります。躁うつやパニック障害などを持ち、震災以前から通院していた方々はもちろん、子育てで悩んでいる母親や、津波体験のトラウマを持ちつつも周囲に話すことができない若者などの相談も受けています。

大船渡市では、地域の精神保健を担っていた心療内科を持つ病院が被災しました。精神科のある総合病院は無事でしたが、一般の方からすると、心療内科よりも精神科のほうがハードルが高く、なかなかドアをたたくことができません。被災地で展開する医療支援も、高齢者介護が優先されて、心のケアへの対応は後回しにされがちでした。ましてや、心の問題は、自覚症状がなかったり、自ら症状を訴えて病院へ足を運びにくかったりと、ニーズが表面化しにくい問題。愛知ネットでも、当初カウンセリングルームは完全予約制にしてみたものの、まったく電話が来ませんでした。

一方、避難所では慣れない共同生活で人間関係に悩む方も多数存在しました。プライバシーが確保できない空間でたまるストレスに、高齢者の介護や家庭内の虐待、嫁姑の関係など、家族が近くに住むことで表面化する問題も加わり、無気力になったり、ふさぎ込んだりする方も多数見受けられました。NPO愛知ネットでは、大船渡市内を中心に2人のカウンセラーで約10か所の避難所の巡回カウンセリングを行ってきました。巡回しているその場で「10分でも話を聞いてくれる人がいて、気が楽になった」というケースもありました。地道に巡回カウンセリングを行うことで、ようやくカウンセリングルームの認知度が上がってきました。カウンセリングを行う臨床心理士は「カウンセリングの潜在的なニーズはたくさんある」と訴えます。

大船渡市でもほかの被災地と同様に、避難所から仮設住宅への引っ越しが進んでいます。懸念されるのは、従来の地域コミュニティがバラバラになってしまうこと。新しい環境になじめず、苦痛を抱える高齢者が増えると予想されます。地域コミュニティの形成支援に市では6月からお茶会を開いており、NPO愛知ネットも協力する方針で準備を進めています。また、地元の保健師との連携で、仮設住宅の個別訪問の支援を行う予定もあります。

NPO愛知ネットは、心のケアを担う方たちへの支援も行っています。教職員に対して、一学期の授業が始まる前に、津波を目の当たりにして恐怖感を抱いている子どもたちとの接し方について研修会を開催しました。ある教師からは「研修会のおかげで自信を持って、子どもたちを迎え入れることができた」との賛辞をいただきました。夏休みに合わせて、保護者向けの研修会も開催。最近では、県内の養護学校の教員たちと一緒に、体を動かすことで心の緊張を解きほぐす動作法というリラクゼーション手法の講習会を開いています。

大船渡市では、NPO愛知ネットの活動を通じて、心のケアが重要であるという認識が広まりつつあります。4月から活動を続けている臨床心理士は「これまでは心の問題は隠すもの、という認識が一般的でしたが、話をして、涙を流せるときに流すことで、気が楽になると実感した方がたくさんいます。心についての理解、つまりは心理教育が広まりそうな雰囲気があります」と語ります。

仮設住宅への新しい生活が始まるとともに、復興までの長い道のりの過程で、心的疲労やストレスを感じることが増えると考えられます。それらに直接の対応するカウンセリングのほか、地元の方々で対処できるような心理教育のニーズも増えています。将来的に地域に根付く心のケア事業を展開できるよう、NPO愛知ネットは活動を続けています。