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活動報告

被災地を支援する

NPOパートナー協働事業

2012/01/16

「今度は山の人間が海の人間を助けなければ」――協働パートナー紹介

被災地のさまざまなニーズに応えるため、Civic Forceが4月から続けてきた「NPOパートナー協働事業」は、現在第3期目に入り、中長期的な視点を持つ地域復興のためのコミュニティ支援に力を入れています。今回は、昨年12月末に協定を締結した「日本の森バイオマスネットワーク」の活動について紹介します。自然エネルギーを利用した被災者向けの“復興共生住宅”プロジェクトは、従来の仮設住宅のあり方や復興住宅への新たな提案を含む画期的な取り組みとして、静かに注目を集めています。

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福島県の原子力発電事故の影響で、被災地では今、再生エネルギーの導入やエコタウンづくりに向けたさまざまな動きが活発化しています。特に、昨年11月末に成立した2011年度第3次補正予算の関連法案では、被災地における再生・復興事業として、大学や公設試験機関、企業などの参画により、最先端の太陽光発電、スマートコミュニティの導入や、浮体式洋上風力発電といった技術開発・実証を行うための研究開発拠点の整備推進が掲げられています。関連法案の成立により、被災地における自然エネルギーを活用した取り組みにさらに拍車がかかっています。

こうした流れに先駆けて、Civic Forceは昨年12月末、NPOパートナー協働事業として、「日本の森バイオマスネットワーク」と協定を結び、自然エネルギーを利用した、被災者のための復興共生住宅を建設するプロジェクトをサポートすることとなりました。

日本の森バイオマスネットワークは、宮城県北西部に位置する栗原市の環境教育団体、くりこま高原自然学校や、製材所の栗駒木材株式会社などが中心となって2008年に立ち上げられた民間のネットワーク組織。森林の豊かな土地柄を生かして、今まで焼却処分されていた製材端材や間伐材などを利用した木質ペレット燃料や国産材の普及に取り組みながら、森と暮らしをつなげることで新しい産業をつくり出し、山も人も地域も元気になれる持続可能な社会の実現を目指してきました。具体的には、環境教育の実施や環境省のCO2排出権取引制度、バイオマス燃料の普及などに取り組んできた実績があります。

事務所を置く栗原市は、内陸に位置するため、今回の震災では津波の被害は最小限にとどまりました。しかし、2008年に起きた岩手・宮城内陸地震で被災した際、2年間の避難指示を受け、それまで続けてきた環境教育活動を中断せざるをえませんでした。そこで、新たな事業展開を目的に、09年度内閣府「地方の元気再生事業」を実施。その一環として、木質ペレット燃料を中心とした森林資源を活用しながら持続可能な地域づくりを目指す「日本の森バイオマスネットワーク」を立ち上げ、何とか活動を継続してきました。

resizeDSC02943.jpg(自然エネルギー燃料として活用できる木質ペレット)

 

「今度は山の人間が海の人間を助けなければ」(副理事長・大場隆博さん)――今回の東日本大震災では、発生直後から避難所で木質ペレットを利用したストーブを設置したり、支援物資を配布するなど、被災した沿岸部の人々への支援を続けてきました。

そうした活動の中で見えてきたのが、仮設住宅の問題です。従来の仮設住宅は、結露や断熱性など寒さ対策が万全ではなく、輸入資材の利用や、2年後の撤去の際のごみ問題など、環境への配慮が十分ではありません。また、大手業者が中心となって建設するため地元経済への貢献がなく、さらにはコミュニティの寸断といった問題も浮上しています。これらの課題に対し、「バイオマスネットワークならではの中長期的な支援ができないか」と話し合った結果、発案されたのが、自然エネルギーを活用した地域密着型の復興共生住宅「手のひらに太陽の家」プロジェクトです。

建設予定地は、栗原市と気仙沼市の中間に位置する登米市。特に、自立支援を必要としている震災遺児や震災により母子・父子となった親子、放射能汚染により地域外避難を必要とする子どもたちを受け入れ、入居者同士が共生しながら安心して暮らせる住環境を目指します。太陽光発電、太陽熱給湯、ペレットボイラーなど自然エネルギーを最大限活用した持続可能な住宅モデル、地元の木材や業者に依頼し、地域経済にも貢献することがねらいです。将来的には、地域の活性化のための拠点として活用できるようにすることを目指しています。

震災が起きる以前から、木質バイオマスの普及啓発活動を続けてきたという事務局長の唐澤晋平さんは、「木材の製材過程で出る7割もの端材は、石油に代わる資源として有効利用することで、地域内経済活性化のカギ。震災が起き、今こそその考え方に基づく構想を実現する時期が来たと捉えています。手のひらに太陽の家へ来ることを希望する被災者の方の自立につながる住宅にしたいし、将来的には新しいエコタウンの一つとして町の活性化にもつなげるため、町の人との協力体制も大切にしています」と言います。

被災地におけるエコタウン構想などが注目される中、今後の復興における新しい住宅モデルの提案として重要な役割を担う「手のひらに太陽の家プロジェクト」。次回は、Civic Forceがサポートする「手のひらに太陽の家」の融和促進事業についてお伝えします。

 

resizeDSC02944.jpg

長屋をイメージして設計された「手のひらに太陽の家」の模型