2013/03/01
前回に続き、山形県米沢市で福島からの避難者を受け入れている「生活クラブやまがた生活協同組合」の活動について紹介します。福島からの避難者を大規模にサポートしている民間組織は全国でもあまり例がありませんが、収束までの時間が全く読めない福島原発問題を前に、避難者が福島に戻るか、山形で再出発するか、いずれかの選択をするまでは寄り添い続ける覚悟を持って取り組んでいます。
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「お茶会を通じて職場を見つけた」「親同士で話して悩みを共有できる場ができた」――住み慣れた福島から離れ、仕事や居場所を失ったり家族や友人と離ればなれで暮らさざるを得ない避難者のストレスは、ときに家庭内暴力やひきこもりなどに発展する深刻な問題です。そうした課題を少しでも軽減するため、生活クラブやまがたでは、福島からの避難者が多く入居する山形県米沢市内の雇用促進住宅近くの1会場で、毎週水曜、避難者の不安緩和の場として、「お茶会」を実施しています。
生活クラブやまがたの澤田さんによれば、お茶会は「皆のよりどころ」。皆が集まることを通じて職を見つけたある母親は、「精神的に追い詰められ、子どもに強くあたってしまうことがあったが、仕事をすることによって家以外の居場所、ストレス解消の場ができ、精神的に落ち着いた。自分の経験から他の若いお母さんにも仕事をすることを勧めたり、紹介するようになった」と言います。また、「福島に帰ろうか悩んでいるが、このお茶会があるからまだいようかな」という母親もいます。
福島からの避難者は市内各地区に分散して住んでいることから、こうしたお茶会に参加できる人はまだ限られていますが、生活クラブやまがたでは、ニーズを認識し、開催場所を増やしていくことも検討しています。また、避難期間の長期化に伴う家庭内での問題、特に親子間の課題が多様化していることを考慮し、親子が一緒に参加できる企画を「お茶会」の一部として実施。新たな参加者を促すとともにそこから垣間見られるニーズを発掘し、対応していきます。
また、生活クラブやまがたでは、避難者からの圧倒的なニーズに応えるために、月1回、「10円バザー」を開催しています。「10円バザー」とは、全国からの善意で集められた物資を、地元企業の倉庫を借りて避難者に10円で物資を販売するというもの。福島からの避難者は父親が福島に残って仕事をしている関係で、米沢に避難している母子家庭は経済的に苦しい場合が多いと言います。そうした中、おむつや粉ミルクなどの生活必需品を10円で購入できるこのバザーは、避難者にとって今や欠かせない行事の一つで、朝10時開店のところを6時から並んで待つ人もいます。
このほか、NPOパートナー協働事業では、福島の避難者が気軽に悩みを相談できる民間の「相談窓口」を設置。生活クラブやまがたでは、これまでも窓口を設けており、「生活必需品が足りなくて困っている」「近所から子どもが泣き叫ぶ声が聞こえる」などのほか、職場探しの相談には、米沢市に広く組合員を持つ同団体の強みを生かし、マッチングして解決できることは相談に応じてきました。その他、行政などに掛け合う必要があるケースもできる限り対応しています。今後は、窓口業務強化をするとともに、行政や各団体とこれまでに以上に連携して、問題解決につながるサポートを始めます。